ビジネス

2016.04.23

シリコンバレーで勝ち続けるために大切なこと

マルケトCEOのフィル・フェルナンデス (photograph by Akina Okada)

1980年代から約30年、激動のシリコンバレーを見つめてきた、マルケトCEOフィル・フェルナンデスの経営哲学とは?

「私は、ロングターム・シンカー(長期的な視点の持ち主)です」

マルケトCEOのフィル・フェルナンデスは、静かに語る。「私のライバルは、ラリー・エリソン(オラクル創業者)や、マーク・ベニオフ(セールスフォース・ドットコム創業者)といった人たちです。彼らと戦うにあたって、過去を分析し、未来に対しどう戦略を組み立てるかについては、大学時代に学んだ歴史から得たことは大きいかもしれません」。

フェルナンデスがスタンフォード大学で歴史を学んだ1980年代、シリコンバレーは今とは全く異なる環境だった。コンピュータに関する知識を持つ者は少なかった、という。卒業後、当地でいくつかのスタートアップ企業を経験し、2006年にマーケティング・オートメーションに特化したソフトウェア会社「Marketo」を創業。栄枯盛衰激しいシリコンバレーにおいて、今年創業10年を迎えた。

過去4年の成長率は平均80%、15年度第3期までの売上総額は、180億円に達した。顧客にはパナソニック、インテル、グーグルなど世界トップのグローバル企業を含む世界39カ国、4,500社に及ぶ。14年には日本にも進出。電通イーマーケティングワン、サンブリッジと共にジョイント・ベンチャーを立ち上げた。

「いくつかのIT企業経営者によっては、短期間に利益を出し、売却して終わり、という考えの人もいるかもしれません。しかし、私は、どれだけ世の中に持続可能な価値を提供できるか、という点に重きを置いています」

フェルナンデスが世界に提供する価値とは、「顧客との1対1の関係」を生む、テクノロジーを利用した新しい時代のコミュニケーション・ツールだ。

「『マーケティングの自動化』とは、必ずしも適切な言葉ではありません。我々が提供するのは、デジタル上での、顧客のジャーニー(旅)を個別に分析し、顧客の歴史を辿り、あたかも企業と顧客が1対1の関係を構築できるようにサポートするプラットフォームです」

モバイル、PC、タブレット。ユーザーにとってツールの境目はなくなりつつあり、企業と顧客のコミュニケーションは常に新しい技術が生まれ、大きく変革していく。

チームには、短期的な事象に惑わされぬよう、注意深く助言する。学生時代にはアートに没頭。彫刻を作ることも好きだったというフェルナンデスが追求するのは、今も昔も変わらず、顧客にとっての美しい体験と価値だ。

フォーブス ジャパン編集部 = 文 岡田晃奈 = 写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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