—ベンチャーフィランソロピーの最新トレンドはどんなものですか。
カー:フィランソロピーは永続的なトピックであり、発展途上の分野だ。これがトレンドというよりも、難病撲滅などの健康問題や教育格差解消など、常に重要なトピックが存在する。ベンチャーフィランソロピーは、社会のパワフルなツールになりつつあるが、富を再分配し、人々を支援する方法としては、総体的にまだ小さな割合にとどまっている。成長の余地は大きい。
とはいえ、ベンチャーフィランソロピーで成果を上げている組織に共通するのは、実験的アプローチだ。成功するかどうか未知数のアイデアに大金を投じ、大規模に展開するよりも、たとえばアフリカや米国の一部で数通りの解決法を試し、うまくいったものを対象に投資額や場所を拡大する。いわば試行的マインドセットだ。
—ベンチャーフィランソロピーや社会的責任投資など、ソーシャルファイナンスの将来は、どうなっていくと思いますか。
カー:予測しがたい。クラウドファンディングが、スタートアップ企業の資金調達方法に多大な影響を及ぼしているからだ。こうしたプラットフォームがどれほどの規模に膨れ上がるのか、規制はどうなるのかわからないため、一般的なベンチャーの20年後を予測するのさえ難しい。
ましてや、新テクノロジーの開発が始まったばかりのベンチャーフィランソロピーとなれば、なおさらだ。10年後には面白いほど状況が変わっているだろう。バリアーが少なくなれば、効率性の低かった「善意の投資」が日の目を見ることになる。
ウィリアム・R・カー◎ハーバード大学ビジネススクール教授。同校「新規ベンチャー起動」プログラム責任者。ハーバード大学ビジネススクールで、専門とする起業とイノベーション、企業内起業について教えている。2006年には自らもスタートアップを立ち上げた。13年、米起業支援団体ユーイング・マリオン・カウフマン財団から優秀な若手研究者に贈られる「プライズ・メダル賞」受賞。