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(Photo by Mark Makela/Getty Images)

米ヒューレット・パッカード(HP)は2015年11月、PC・プリンティング事業を担うHPと法人向け事業のヒューレット・パッカード・エンタープライズの2社に分社した。“足が速い”と言われる、ハイテク・IT・エレクトロニクス業界ではこの他、米シマンテックのセキュリティ分野と情報管理分野の分社化、蘭ロイヤル・フィリップスのヘルステック分野とライティング分野の分社化、独シーメンスの補聴器事業の売却など、「セパレーション(分割・独立または売却)」がこの数年、再び活発になっている。

“ポジティブな手段”として活用を

企業が成長を実現する手段は、「オーガニック=内部資源の活用」による成長と「インオーガニック=外部資源の獲得」による成長という2つのカテゴリーがある。インオーガニックの代表は、M&A(合併・買収)であり、規模拡大だけでなく、イノベーションを取り込む手段としても登場する。しかし、今回は馴染み深い「買い」の視点からではなく、その裏にある「売り」=セパレーション(分割・独立または売却)を起点に考えたい。

セパレーション自体は目新しいものではない。米国では1960年代後半から70年代前半までの多角化(コングロマリット化)ブームが去った80年代半ばに多く実行されたことをご記憶の方もいるだろう。最近では、冒頭以外にも米デュポンの高機能化学部門の分離独立、独バイエルのマテリアルサイエンス事業の分離、米ゴールドマン・サックスの携帯端末向けソフト事業の分離独立、米メットライフの米国内の個人向け生命保険部門の切り離し、米GEのキャピタル部門の売却など多業界に渡り行われている。

その動機は様々だが、主には低成長・低収益事業への対処であり、それは今般の活発化でも大きくは違わない。ハイテク業界で相次ぐ、規模拡大を追った数年前のM&A失敗からの回復を意図した分割独立は、その顕著な例である。他にも、新たな規制に対する負担回避や、社会や産業の未来を見定めた上で自社の持つ事業を選んでいく前向きな判断もある。とはいえ、国籍を問わず、企業にとってセパレーションという判断は非常に難しい。事業を始めることはできてもそこから手を引くことは容易ではない。調子が悪くない事業、一定の利益が出ている事業の切り離しとなると尚更である。

しかしながら、産業の垣根が曖昧になり、変化も速い世界では、何かにフォーカスせねば生き残れない。その過程に「セパレーション」があるのだ。

このような企業の判断の裏には、アクティビスト(物言う株主)が存在するケースも少なくない。現在のアクティビストは、80年代の米国における「乗っ取り屋」のイメージではないが、時に高圧的に、増配や自己株消却、レバレッジを利かせる事業変革などを要求し、株が上昇したところで売り抜くなど、短期的な利を狙う傾向は強い。

他方で、短期的にはコストが増えても、長期的に企業価値の向上に貢献する施策を提案するアクティビストも登場している。もちろん、したたかで頭の切れる彼らからの提案の良し悪しを、取締役会や経営者が正しく評価できてこそだが、必ずしも彼らは企業にとって脅威ではなく、長期的な価値創造に繋がる策を後押ししてくれる存在にもなり得る。

ネガティブな印象を持たれがちで、実際、ネガティブな理由で起こるケースも多いセパレーションではあるが、企業の未来をつくっていくポジティブな手段として活用例も出てきている。

日置圭介 = 文

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