資本主義の仕組みを使い、貧困解決のために途上国の社会的企業に投資する。いわゆる「インパクト投資」を行うNPO「Acumen」のNY本部でオンラインのリーダー育成プログラムの設計をしています。
寄付金をプールして、インドやパキスタン、西・東アフリカとラテンアメリカといった地域にいる社会起業家に投資をする。そんな、ベンチャーキャピタル式の働きをしている組織であり、このような取り組みの最終的なゴールは、世界の貧困への取り組み方を変えていくことです。
この最終的な目標は2001年の創業当時から何一つ変わっていないのですが、もう一つの柱として、06年から「リーダー育成」に力を入れています。
資本を投入するだけでは、貧困解決に行き着くまでにどうしても長い時間が必要になる。スピードを加速するためには、どうすればいいのか。辿り着いた答えが、もっと「個人」を育てる必要がある、ということでした。つまり、Acumenの思想や手法に共感し、積極的に世界の様々な貧困解決に取り組んでいく人々を育てていく必要がある、と考えたのです。
06年からはフェローシップという名のもと対面式のトレーニングを行い、12年末に無料のオンラインコースの提供が始まりました。現在22のコースがあり、世界176カ国、約25万人が受講しています。
私たちが考える、世界を変えていくリーダーが持つべき資質は、大きく分けて2つあります。1つはマインドセット面のもの。もう1つは、スキルベースのものです。
1つ目のマインドセット面のものについては、私たちは「モラルイマジネーション」と呼んでいます。日本語にすると、「道徳的な想像力」でしょうか。現実を直視する勇気、直視しようとする謙虚さ。それと同時に、「こんな世界になるべき」と、想像する大胆さ。
具体的なコースとしては、例えば「アイデンティティ」に関するものがあります。そもそも自分のアイデンティティとは何か。それが自分の行動や、世界で起きている事のとらえ方にどう影響しているのか。アイデンティティという切り口から、世界で起きている事象について自らのあるべき姿に矢を向けていく。
2つ目の資質であるスキルベースのものは、もう少し実践的です。例えば、「こんな世界にしていきたい」という想いを抱いている人々、または考え始めている人々が誰でも活用できるような「ストーリーテリング」「デザインシンキング」「リーンスタートアップ」や「社会的インパクト測定」といったコースを提供しています。