国際送金を変える「トランスファーワイズ」 日本でも始動

共同創業者である、 ターベット・ヒンリクス(右)とクリスト・カールマン(左)。TransferWiseのロンドンオフィス近辺にて。(photograph by Courtesy of TW)


国際送金取扱高は毎月7億ドル

個人間で外貨をやり取りするためのシステムは、スカイプ最初の従業員であるヒンリクスが、同社アルゴリズムを応用することで実現させた。現在、トランスファーワイズはロンドンにビジネス上の本拠を置いているが、創業者たちの故郷であるエストニアが彼らにとってのホームだという考えは変わらず、オフィス規模も最大だ。

「エストニアはビジネス環境が整備されており、大きなビジョンと賢さを併せ持つ、アントレプレナー精神溢れる人々が大勢います。実際、創業時の我々にはいくつかの選択肢がありましたが、もし我々が心から『エストニアは企業成長させていく上で素晴らしい場所だ』と考えていなければ、この地でビジネスを始めていなかったでしょう。その時の決断は正しかった—、という思いは今でも変わりません」

ヒンリクスは自らのミッションを「インパクトを作ることだ」と語る。利用者にとってよりフェアなものを作り出し、全ての金融セクターを変えていく—。

急成長を遂げたトランスファーワイズの実績を見るに、それも大げさな話ではない。トランスファーワイズの送金取扱高は毎月7億ドルを超えており、これは1日当たり100万ドル、年間3億ドル以上もの銀行手数料削減につながっている。だが、同社の調べによると、個人や中小ビジネスにおける国際送金額は、世界全体で年間5兆〜10兆ドルに達する。それに加え、マッキンゼー・アンド・カンパニーの最新レポートでは、銀行が国際送金によって得る手数料を年間3,000億ドルと計上している。

「世界全体に置き換えれば、我々のシェアは0.1%でしかありません。つまり、まだそれだけ多くの余地が残っているのです。現在、我々はイギリス市場で5%のマーケットシェアを誇っていますが、今年中にそれを2倍にする計画です。お金を国際的に動かしたいと考えている世界中の人々の役に立ちたい—、私たちに休息はありません」

15年にアメリカとオーストラリアへ参入した同社が、16年に狙うのはアジア。香港、シンガポール、そして日本だ。15年秋の同社コーポレートサイトには、日本マネージャーの募集要項が掲載され、既に日本国内で専門チームが活動を始めている。

「16年秋までに、日本でローンチする計画を立てています。国際送金における、より快適なユーザー体験を日本の皆様へ提供できることに対し、我々は非常に興奮しています」

TransferWise(トランスファーワイズ)
2010年創業。P2P技術を用いた国際送金サービスを2011年に提供開始、海外送金に掛かる手数料負担を10分の1まで減らした。現在では50カ国以上でサービスを提供、主要35通貨で取引されている。オフィスは4カ国に展開、社員数は500人に上る。

土橋克寿 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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