国際送金を変える「トランスファーワイズ」 日本でも始動

共同創業者である、 ターベット・ヒンリクス(右)とクリスト・カールマン(左)。TransferWiseのロンドンオフィス近辺にて。(photograph by Courtesy of TW)

Skypeを育んだIT先進国エストニア。その次なる最大の注目株が、ユニコーン企業として知られる国際送金サービスの「トランスファーワイズ」だ。

2013年にピーター・ティールらが600万ドル、14年にリチャード・ブランソンらが2,500万ドル、15年にアンドリーセン・ホロウィッツらが5,800万ドルを投資した国際送金サービス「TransferWise(トランスファーワイズ)」。今ではユニコーン(企業価値10億ドル超えの未公開企業)の一角を成す、世界でも指折りのフィンテック・スタートアップだ。

なぜ、この企業は、名立たる投資家を惹きつけたのか—。共同創業者の1人、ターベット・ヒンリクスが何よりも強調したのは基本理念の重要性だ。

「我々は『金融業界はフェアであり、透明であるべき』と信じています。創業期から一貫しているこの基本理念が、我々の最大の強みであり、最も重要なポイントです。投資家と数多くの会合を持ちましたが、彼らの出資は常に、我々の理念そのものへの共感から始まるものでした」

トランスファーワイズは2010年に創業—、その背景には共同創業者であるヒンリクスとクリスト・カールマンの原体験がある。当時、ヒンリクスはエストニアの預金を定期的にイギリスへ送金する必要に迫られていたが、その高い海外送金手数料に疑問を抱いていた。一方、カールマンはイギリスの預金をエストニアへ送金する際に、同様の不満を持っていた。2人は話し合った結果、現在のサービスの基本モデル—、お互いの支払いを肩代わりすることで送金手数料を省けることに気付いた。

「当時、銀行側には我々と同様のサービスを提供する選択肢がありました。しかし、顧客満足に結びつくにもかかわらず、彼らはその道を選びませんでした。Skype(スカイプ)で使われた、個人の端末間でデータやり取りをするP2P(ピア・ツー・ピア)技術を活用することで、私たちはより早く、より安いコストでお金を移すことができたのです」
 
トランスファーワイズでは、銀行に手数料を支払って海外へ送金するのではなく、互いの通貨を交換したい人同士をマッチングさせている。A氏が持つX通貨預金でB氏のX通貨支払いを、B氏が持つY通貨預金でA氏のY通貨支払いを受け持つというカタチだ。そうすると例えば、1,000ポンド分をユーロで支払いたい場合、平均的な銀行手数料は49.48ポンドだが、トランスファーワイズ経由なら4.98ポンドで済む。手数料が10分の1程度に収まる上、為替レートもいい。さらに、どのようなプロセスを経て、どの程度の手数料が掛かっているかも事細かに情報公開されている。

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土橋克寿 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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