アジアの未来を担う、日本の医療テクノロジー

illustration by MUTI - Folio Art

今、世界でどのようなことが課題になっているのか。それを見ずして、新たなビジネスチャンスは生まれない。国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」は、世界が2030年までに解決すべき課題を169項目において提示してくれている。その中に次世代の事業モデルのヒントが隠されていないだろうか—。ジャンル別の課題について、元国連職員でもあるデロイト トーマツ コンサルティング執行役員ディレクター、田瀬和夫に話を聞いた。

技術革新が、世界に「健康的な生活」をもたらす

「〈すべての人々に対する(中略)安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する(目標3.8項)〉という項目は、日本側の強い要望によって入れられたものです。日本の国民皆保険制度は、他のどの国にもない優れた制度。インドネシアなど、アジアの国が導入を検討しています。また、日本の製薬企業は、『質が高く安価な必須医薬品』を幅広く提供することにおいて世界の市場に出遅れている。製薬だけでなく、医療機器、計測機器など、日本の医療産業がリードできる可能性は多くあります」(田瀬)

また、健康的な生活と福祉の促進を目標にかかげる同項目には、下記のような個別具体的な目標もある。〈2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる(目標3.6項)〉。「これは公共政策だけでは実現不可能で、自動運転技術や、信号技術といった、技術的イノベーションが求められています」(同前)。

国内の自動車大手のみならず、ベンチャーが進めるIoTや無人タクシーなど、あらゆるシーンで技術革新が必要。既に「交通事故ゼロ」を目標に開発を進めるメーカーもあるが、その目標の価値を、世界に向けて発信する、強力な後押しとなる。

たせ・かずお◎1992年外務省入省。2004年より国際連合事務局・人道調整部・人間の安全保障ユニットに出向。14年5月に国連を退職、6月より現職。公共政策と民間利益の『共創』をテーマに活動する。

解説:田瀬和夫 (元国連職員、デロイト トーマツ コンサルティング執行役員ディレクター)文:フォーブスジャパン編集部 イラストレーション:ムティ(フォリオアート)

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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