一番熱中しているのはGM
「テスラ羨望」に熱中する人が特に多いのは、「モデル3」と直接競合する「シボレー・ボルト」を向こう1年以内に発売する計画のゼネラルモーターズ(GM)の社内だ。ボルトは価格も、モデル3と同程度が予定されている。
しかし、当然ながら「ボルト」は「モデル3」ではない。そして、それが問題なのだ。自動車のデザイナーもマーケティング担当者も、製造主任も、意思決定の担当者も、自動車業界に携わる世界中の誰もが、起業以来一貫してメディアの羨望を集め、富裕層の間の熱狂的なファンや、忍耐強い投資家たちを獲得してきたマスクの能力に、嫉妬心を抱いてきたはずだ。
考えてみてほしい。テスラが第1四半期に販売したのは7,550台。一方で、GMの同期の販売台数はおよそ68万4,000台だ。それにもかかわらず、あるコラムニストがデトロイトの地元紙デトロイト・ニュース紙で指摘したところによれば、「4月7日の取引終了時点での時価総額は、テスラが360億ドル(約3兆8,980億円)超。GMは460億だ」。
さらに、米消費者団体「コンシューマーズ・ユニオン」が発行する「コンシューマー・リポート」は昨年発表した各モデルに対する評価の中で、モデルSに非常に高い得点を与えた。それどころか、この車のために評価基準を変えてさえしまった。
モデル3を発表した今年3月、マスクは売り上げ予想が「疑わしい」と自ら冗談をとばした。もちろん、テスラは当初から、生産~販売までに設定している予定表のすべてが疑わしく、過度に楽観的だ。だが、メディアはそれについても「ほら見たことか」という態度を取るのではなく、同情心をもってクスクスと笑うだけなのだ。
既存の自動車メーカーのまさに縮図であり、デトロイトの常識の究極の守護者であるGMがボルトを発売すれば、マスクの目標達成を阻止し、テスラを追い抜くことができるのか。非常に興味深いところだ。それが実現すれば、最高の皮肉だ。そして、人気の室内ゲームの勝者は、デトロイトだということになる。