ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部の研究チームが4月1日から開催された米国内分泌学会で発表した研究結果によると、卵巣を摘出したマウスで実施した人工卵巣の移植実験の結果、マウスは妊娠後、問題なく出産した。
研究を主導したモニカ・ラロンダ博士によれば、実験は「最終的には人間の不妊治療に適用することを念頭に置いた」ものであり、チームは「がん治療の副作用や先天的な卵巣機能の障害により低下したホルモン分泌・生殖機能の回復」を目指している。
チームは実験に向け、卵巣にある未成熟細胞(卵母細胞)とホルモン産生細胞のどちらにも利用可能で、卵母細胞の成長や排卵、血管形成が可能な柔軟性を持った多孔質の細胞支持構造を設計した。その結果、3Dプリントにより卵子を作り、ホルモンを分泌し、移植が可能な有機的な卵巣が完成した。この卵巣はマウスの妊娠・出産、授乳、女性ホルモン分泌によるサイクルを可能にしたほか、将来的には複雑な軟組織を置換するための方法の枠組みを提供する可能性がある。
医学研究で検査にマウスが使用されるのは、ヒトとの生理学的な類似性と反応における類似性のためだ。研究者らは今回の人工卵巣は拡大可能な設計であり、将来は卵巣機能が低下した女性の治療につなげることができると見込んでいる。また、移植は成人になってがんを発症、治療を受けた女性たちに加え、米国では250人に1人とされ、不妊のほかホルモン異常による発達障害が起きる可能性が高い小児がんの生存者を対象とする方針だ。
ラロンダ博士は、「がんと診断された患者にとっての最大の懸念は、治療が妊娠の可能性とホルモン系の健康にどのように影響を及ぼすかということだ」と指摘。「我々は、人工卵巣移植の実現によって患者の人生の質を回復させるための新たな方法の開発を進めている」と述べている。