モバイル決済サービスの雄「ストライプ」 若きコリソン兄弟の苦闘

ジョン・コリソン Stripe共同創業者 (photographs by Jamel Toppin)


だからこそ、コリソン兄弟は決して気を緩めない。パトリックは次のように語る。「ここまでの成功は嬉しいですが、自分たちが見据えるゴールはまだまだ先にある今、社内で満足している人がいたら、大問題ですね」。

デジタル決済の簡易化に成功したことは、ストライプの野望に向けた初めの一歩に過ぎない。その野望とは、商取引の新しいプラットフォームを築くこと。あらゆるインターネットビジネスをサポートするアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の金融版のようなものだろう。

昨年はフェイスブックやピンタレスト、ツイッターのアプリ上で「購入ボタン」を押すだけですぐに商品を購入できるサービス「Stripe Relay」も開始した。これで小売業者は商品の直接販売が可能になった。一部のアナリストが「モバイルコマース界の次の大きなトレンドになる」と予想しているものだ。

開発のきっかけは、eコマースに初参入するツイッターがストライプに協力を求めたことにある。ツイッターは数千社にのぼる大小様々な小売業者にとって使いやすい簡単な販売システムを欲していた。小売業者ごとに異なるシステムが何十種類もあるので問題の解決は簡単ではなかった。だが、ストライプはこの難題をみごとに解決した。この開発が新サービスの基礎となったのだ。

ストライプの「複雑なものごとをシンプルにする力」は、スラックCEOのスコット・バターフィールドの心をとらえた。スラックは昨年、ブレインツリーとの契約を打ち切りストライプへの乗り換えを決めた。その理由は、様々な通貨や決済方法を処理でき、自社の経理ソフトウェアとの統合が可能だったからだ。

「お金を動かすというのは、気が遠くなるほどいろいろなことが絡み合った難しい作業なのです。ストライプはそれをぐっと簡単にしてくれました」

このようにストライプは顧客を手助けしながら、自らも成長する。15年の初め、リフトはドライバーたちにより早く支払いを行いたいとストライプに開発を持ちかけた。12月には「Express Pay」を立ち上げ、数日かかっていたドライバーへの支払いが、乗客が料金を払うとほぼ同時に振り込まれるようになった。

「これはドライバーにとっては非常に重要なことです。当社にとっても、大きな“ウリ”になります」とリフトのプロダクト担当バイスプレジデントのタリー・ララポートは話す。

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ミゲル・ヘルフト = 文 ジャメル・トッピン = 写真 徳田令子 = 翻訳 山下祐司 = 構成

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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