モバイル決済サービスの雄「ストライプ」 若きコリソン兄弟の苦闘

ジョン・コリソン Stripe共同創業者 (photographs by Jamel Toppin)


アメリカ人の27%が利用経験あり

ストライプのモバイル決済サービスを開発したのはパトリック・コリソン(27歳)とジョン・コリソン(25歳)の兄弟。アイルランドからの移民で2人とも大学を中退し、20代前半で事業を立ち上げた。現在、勢いのあるスタートアップの中でもトップクラスの称賛を集め、羨望の的でもある。型にはまりがちな金融サービス業界では強力な新興勢力と目されている。立ち上げから快進撃を続けること5年。「Forbes 30 under 30」に選出されてから、まだ2年。ストライプは兄弟の夢である「決済革命」に向けてハイスピードで進んでいる。

謙遜と思慮深さー。それはコリソン兄弟の代名詞でもある。誰もがストライプの成功を信じられる理由はそこだ。ストライプの役員を務めるセコイア・キャピタルのマイケル・モリッツはコリソン兄弟を、これまでの投資先の中で「最も頭の切れる人たち」だと評価する。ペイパルやヤフー、グーグルに投資してきたベテランの最上級の褒め言葉だ。

数十万社にも及ぶストライプの顧客の規模は比較的小さい。しかし、取引する配車サービス「リフト」やEC作成プラットフォーム「ショッピファイ」、クラウドファンディングの「キックスターター」、宅配サービス「ポストメイツ」といった有名企業の決済額を合わせると数百億ドルにのぼり、この多くがストライプ経由だという。

未上場のストライプは売り上げを公表していないが、業界関係者は年間200億ドル程度の決済を引き受けているとみる。

米国内では、支払金額の2.9%に加えて1件あたり30セントが手数料としてストライプに入る仕組みになっている。ある条件の試算ではストライプの売り上げは4億5,000万ドルを超える。また、同社によれば昨年末までにアメリカ人の27%が一度はストライプ経由で何らかの買い物をしている計算になったという。2年前は3.8%だったことを考えると大躍進である。

しかし、ライバルにも手強い顔ぶれが揃う。ペイパルを親会社に持つブレインツリーは今年、ストライプの倍を超える500億ドルを取り扱うと発表。同社はウーバーやエアビーアンドビーといったスター顧客も抱えている。急成長しているヨーロッパのスタートアップ「アドイェン」も事業規模でストライプを凌駕し、積極的な展開を続けている。

ストライプの予想ではインターネット決済はまだ全世界の商取引の2%程度にとどまっているという。であれば、複数のライバルが存在していてもあり余る可能性が眠っている、これがコリソン兄弟や同社に投資しているセコイア・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツなどの投資家たちの見方である。
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ミゲル・ヘルフト = 文 ジャメル・トッピン = 写真 徳田令子 = 翻訳 山下祐司 = 構成

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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