そのような決断の仕方、また情報収集をすることで、女性は男性よりも準備万全という傾向もある。自分の性別が理由で資質が疑問視されているのではという感覚を抱いているために、できる限りの備えをしておく必要性を感じるが故の行動ともいえる。
そして面白いことに、この傾向が男性に影響を及ぼすともポストは言う。「女性が出席する重役会議は、男性役員の出席率が上がる。女性が万全の備えをしていると、全員がそうするようになるという何らかの伝播効果があるのかもしれず、それが全体としてより良い意思決定に役立つ」
だがポストとバイロンは、多様性が企業の業績向上に直結するというのは誤解だとも発見した。現実はもっと複雑で、業績の向上にはそのほかの条件も必要なのだ。アメリカのような企業環境においては、株主が取締役会の中で起こっていることについての情報をより幅広く入手する権利を持っており、自分たちの最大の利益の実現に懸念を抱いた際には法的措置を取ることもあり得る。
だがそのほかの一部の国、あるいは単に多様性の受け入れをためらう企業においては、こうした類のチェックがそこまで厳しくない。そのため経営陣は、多様性の実現、あるいは多様性を実際の変革に生かすことにそこまで圧力を感じない可能性がある。
「取締役会が積極的に、さまざまな視点を求めるプロセスが必要だ」と2人は指摘している。そうなって初めて、女性管理職のプラスの影響が生かされるのだ。