会話がビジネスを変える「チャットボット」戦線、本格始動

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参考になるのが、アジアでのチャットの活用事例だ。WeChatは中国人にとってウェブサービスへの玄関口となっており、人々は送金やタクシー料金の支払いなど日常生活のあらゆるシーンでWeChatを利用している。WeChat上の中国南方航空の公式アカウントでは、ボットと会話をしてフライトを検索したり航空券を予約することができる。

しかし、フェイスブックは単純にWeChatの戦略を模倣すれば良いというわけにはいかない。「アジアと欧米とでは文化、規制、歴史、実用面などで大きな違いがある」とEdison Investment Researchのアナリストであるリチャード・ウィンザーは話す。中国人アナリストも、中国のスマートフォン利用者の方が欧米人よりもボットを受け入れやすい性質があると分析している。

ウィンザーは、メッセンジャーが広告のエコシステムへと育てば、フェイスブックの収益は5年後に倍増すると予測する。しかし、F8カンファレンスでの発表からしばらくは、広告主らは慎重に効果を見極めようとするだろう。

「ユーザーがどのように反応するか予測がつかない。また、どのようにユーザー同士の会話を盛り上げたり、自然な形でチャットに入り込んでユーザーに価値を提供すればよいのかわからない」とSnapsのブルックレリCEOは話す。

マイクロソフトも「ボット戦争」に参入

フェイスブックがチャットボットのプラットフォームを構築する上で、競合となるのがKikメッセンジャーやTelegramなどのメッセンジャーアプリだ。Kikは2億人のユーザーを抱え、80社以上がボットを運用している。また、1億人のアクティブユーザーを持つTelegramでは、サードパーティーによる数千ものチャットボットが既に動作している。

今週、マイクロソフトも開発者向けにスカイプやSlack、Telegramなどのメッセージアプリ用のボットを開発するフレームワークをリリースした。「ボットは会話することのできる新しいアプリケーションのようなものだ」と同社のサトヤ・ナデラCEOは述べている。マイクロソフトの新ツール「Intelligence Suite」を使うメリットは、デジタルアシスタントのコルタナや機械学習のテクノロジーにもアクセスすることができることだ。

マイクロソフトは、ビジネスのスコープの広さではフェイスブックのメッセンジャーに劣るかもしれない。しかし、デジタルアシスタントおいては人力に多くを依存するフェイスブックの「M」よりもはるかに先進的な技術をもっており、ツールとしての魅力度はフェイスブックに劣らないと言える。

編集=上田裕資

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