受け付け開始から1週間での予約件数は、予想を大きく上回っている。この予約により、同社は借入コストなしで、設備投資に充てることが可能な4億ドル近くを手に入れたことになる。株価も上昇している同社は、予定を上回る台数の生産を実現するため、資金調達を行うべきとも考えられる。
「モデルS」売り上げへの影響は?
テスラは出荷が2年近く先になる製品を発表した訳だが、これは製品の生産量にかかわらず、テクノロジー企業としては異例のことだ。現在のラインアップにマイナスの影響を与えるリスクを冒すことになるからだ。だが、同社の場合はそれほどの問題にはならないのかもしれない。なったとしても、2018年以降のことだろう。
ただし、モデル3の生産台数が順調に増加すると仮定すれば、(より高価格の)モデルSの購入を検討していた人がモデル3の予約に切り替える可能性はある(経済学者が代替効果と呼ぶ現象だ)。売上高と利益には、悪影響だといえるはずだ。ただ、純利益を減らすことになっても、企業としては自社製品が別の自社製品に売り上げを奪われる状況の方がまだましだということだろう(アップルはこれをよく行っている)。
テスラ株をどうする?
テスラの株価はここ2か月ほどで85%上昇した。2014年9月4日につけた286.04ドルの最高値に近づくほど急騰している。だが、7日の終値は前日比で約3%下落。株主は少なくとも、保有する株の一部は手放すか、コールの売りを考えておくのが堅実かもしれない。
次に注意すべきポイントは恐らく、2016年第1四半期(1~3月)決算と6月期の業績予想の発表だ。同社は4月4日、今年3月期の新車販売台数が2015年第4四半期を下回ったことを明らかにすると共に、2016年通年の販売目標を8~9万台に据え置く考えを示した。
投資家たちは、今年下半期の生産台数と利益予想に影響する6月期の出荷台数の見通しに注目するはずだ。生産台数が急激に変化したり、業績予想が大幅に下方修正されたりするようであれば、株主たちは利益確保に走り、テスラの株価は再び急落することになるかもしれない。