日本経済を支えてきたファミリービジネスが大きな転換期を迎えている。経営者の高齢化および後継者の不在、需要の多様化、産業構造の変化など、事業承継に暗雲をもたらす要因を挙げるとキリがない。
しかし、早稲田大学ビジネススクール客員教授の米田隆は、発想を転換することで、展望が開けると言う。
「経営というのは、外部環境に大きく左右されます。自身の描いたビジョンと現実のギャップを埋めていくのが戦略だと私は思っています。その手段としておすすめしたいのが定点観測です。市場の動向、ライバル会社との比較、自社の成長率などを定期的に診断することはとても重要です。事業承継の場合、経営者が選択できるオプションは6つです。定点観測を行うことで、右頁に示したアルゴリズムのどの位置に自身の会社があるか、把握できます。自社の企業価値を経営者が客観的に判断できれば、6つのオプションのなかから正しい選択をし、実行に移すことができるのです」
[事業承継における6つの選択肢]
1. 経営を直接的に行う:株の集中・圧倒的な支配
2. ガバナンスによる直接支配:直接業務執行しない→スキームと運営
3. MBO:形は不変
4. 非MBOによる売却
5. 早期の自主撤退:資産を残す
6. 強制的な撤退:莫大な負債
ファミリービジネスによって富を得てきた経営者にとっていちばんの理想は、能力のある子孫に恵まれ、一族が経営に関わることかもしれない。しかしこれからの時代、企業が生き残るためには熾烈な競争に勝ち残らなければならない。グローバル企業であれば、優秀な人材を獲得し、イノベーションを起こすことが目標になるだろうし、ローカル企業なら、地域内の競合他社を積極的に買収し、圧倒的なマーケットシェアの獲得を目指す必要がある。成熟した日本社会では、経営者に求められる資質はますます高度になっているのだ。