ビジネス

2016.04.08

米国の最低賃金引き上げは小売業を変えるか?

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「店舗スタッフ」はキャリアになり得るか

「自分は店舗スタッフから始めた」と言う人は多い。私もそうだった。だがそこから重役レベルまで登りつめる人は極めて少ない。小売業界の重役には「自分はそうだった」と言う人が大勢いるが、果たして何人がそうなのか。数十人、あるいは数百人だろうか。現場で「消耗」されている従業員は何百万、何千万といるのだから、確率が高いとは言えない。

だが別の見方もできる。私の10代の息子は、夏休みに初めてアルバイトをしようと考えている。仕事経験がゼロの多くの若者にとって、小売業は「いい従業員」になるスキルを学ぶいいチャンスだ。決められた時間に出勤し、自分のスケジュールと仕事に責任を持ち、求められる仕事をする。大勢の人と触れ合い、給与を貰い、その自覚を持つ。子どもたちは初めての仕事でそれを学ぶのだ。

最低賃金が引き上げられたら、その経験はできなくなるのだろうか。経験ゼロの息子に時給15ドルを支払うところはなくなってしまうだろうか。次の世代がどうやって「実習」レベルの本物の仕事について経験を積むことができるのか、心配だ。

変革は必要だが

一部の小売店は、義務化に先立って最低賃金の引き上げを実施している。もはや避けられないからそうしたのだろうか。それともオンライン店舗との競争に苦慮するなか、サービス面でのプレッシャーを認識してのことだろうか。恐らく、その両方に当てはまる部分があるのだろう。

重要なのは、良いものも悪いものも含め、あらゆる影響について考えることだ。どんなに利益率が低く、サービスの質が低い小売店であっても、小売業のサービスモデルには変革が必要だ。だが短期間に急激な変革を行えば、間違いなく、意図せぬ劇的な結果を招くことになる。

編集 = 木内涼子

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