2015年はギリシャの金融支援をめぐる問題や、人民元の想定外の切り下げなどを受けた中国景気の鈍化懸念、また、原油価格の急落などが、世界経済への先行きに対する不透明感を高めた。
そんな外部要因に揺れる中、株価騰落率で見てみると、昨年、日本株は量的金融緩和や景気回復、企業業績の拡大などを背景に堅調に推移、9.1%の上昇を見せた。しかし、一転、中国発の世界同時株安で始まった2016年、この資本市場の急変は、このたび発表されたランキングにも少なからず影を落としている。
3/25時点のデータを基に計算された「日本の長者番付トップ50」の純総資産額は、前年比で40億ドルほど減少した。ただ一方で、中国をはじめとする外国人のインバウンド消費が日本の国内消費を支えたほか、M&A・海外進出の積極化などによって、およそ半分のメンバーは純資産を増やしている。番付の最低額は7億5000万ドルで、去年の6億ドルから上昇している。
柳井正、2年連続で首位をキープ
株価下落の影響も大きく、前年度に比べ、資産48億ドルを失うも、連続で堂々たる首位に輝いたファーストリテイリングの柳井正。ファーストリテイリングといえば、2015年、インバウンド消費好調の恩恵を最も受けた企業のひとつといえよう。ただ、長引く不況と少子高齢化で国内の市場の先細りが指摘される中、世界展開に力を入れる構図は変わらず、現在、海外の店舗は800店を超え、今年も中国に100店のオープンを計画と強気の姿勢を示す。
2位は、ソフトバンクの孫正義。いまだ、2013年に買収した米携帯電話会社スプリントの再建に手間取るも、アリババ上場後に多額の資産を得て順位をキープした。
2014年、社長の座を創業家以外に明け渡したサントリーホールディングスの佐治信忠、同じく2015年創業者として経営の一線を退いたキーエンスの滝崎武光がそれぞれ3位と4位にランクイン。
楽天の三木谷浩史は5位に。自動車の相乗りサービスを手掛けるリフトやピンタレストへの出資、米Buy.com、英Play.comの買収と、成長のための積極M&Aを展開しているが、市場の評価は厳しい。この1年で株価は一直線の右肩下がりとなり、柳井氏と同じく48億ドルの資産が失われた。
いずれにしても、日本のトップ長者たちは海外に活路を見出し、大きな行動に打って出ていることは間違いない。その結実こそランキングに反映しているといってもいい。そして、今後も恐らくこの傾向は続いていくだろう。