ヴァージン・アメリカ買収へ、創業者リチャードの思い

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我々の素晴らしい航空会社が他社と合併することに、さみしさを感じないと言えばうそになる──米アラスカ航空が4日、ヴァージン・アメリカ(VA)を買収することで合意したと発表したことを受け、VAの創業者であるリチャード・ブランソンは、自身のブログでそう心境を吐露した。

「残念ながら、買収を阻止するために私ができることは、何もなかった」と述べたブランソンが保有しているのは、VAの無議決権株だけだ。高い評価を受け、受賞経験もあるVAのカスタマーサービスが今後も維持されるかどうかは分からない。だが、サービスに関しては買収する側のアラスカ航空も高い評価を得ていることは、VAにとって幸先が良いことだといえる。

VAが利用客らの心をつかんでいる主な3つの理由について、ブランソンに話を聞いた。

「ゲスト」中心の考え方を伝える

ブランソンによると、「VAは苛立ちから誕生した」。米国までのフライトがますます「ひどい経験」になっていたことが、ブランソンが空の旅を再び素晴らしいものにすることを目標に掲げ、同社を創設するきっかけとなった。

ブランソンによれば、搭乗するすべての乗客にいつでも格別の経験を提供するという目標をトップが共有していなければ、類似点ばかりの航空各社の間で、他社との差別化を図ることはできない。そして、目標の実現に向けた行動は、CEOの言動から始まるものでなくてはならないという。

例えばブランソンは、利用客を「乗客」ではなく「招待客(ゲスト)」と呼ぶ。前者は畜牛のように扱われるが、ゲストは誰かの家に招かれた友人のように扱われるというのだ。

空の旅を再び「楽しい」ものに

ブランソンは旅客機の利用をもう一度楽しい経験にするため、ソーシャルメディアを活用している。VAのゲストが「@virginamerica」に投稿したツイッターのコメントには、ほぼ必ず返信がある。

企業の大半はソーシャルメディアを、広告や販促活動ためのプラットフォーム、あるいはこれらの活動を補足するための手段と捉えている。だが、VAは当初から、利用客との関係を深める方法だと考えてきた。そのロールモデルとなったのが、ブランソンだ。自らツイッターにコメントし、ブログも書いている。すべてのブランドは、自らの声を直接届け、そうすることを楽しむべきだと考えているからだ。

人格重視の採用方針

VAの従業員の全員が、素晴らしい顧客サービス担当者になれるだけの高い心の知能指数(EQ)を持っている訳ではない。だが、VAは採用にあたって、人格を最重要視している。

同社のデイブ・クッシュCEOは以前、自社が採用するのは応募者100人中1人だけだとして、「積極的でフレンドリーで、将来について前向きな考え方を持っている人をまず選ぶ。その中から、技術的な能力をみてさらに選考する」と話していた。

出発がわずかに遅れた便のパイロットがウェイティングエリアに現れ、待たされている利用客らにあいさつして自己紹介し、握手をしながら遅延の理由を説明して回る姿をみることもある。

サービスの良さで知られる企業が引き付けるのは、サービスを重視する人たちだ。こうした応募者たちには、ゲストに喜んでもらうための方法を研修で教える必要もない。アラスカ航空が、ブランソンと同じ目標を持ち、空の旅の経験を変える努力を続けてくれることを願いたい。

編集 = 木内涼子

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