元GSバンカーが語る世界のゴルフ場、「ミュアフィールド」の誘惑

getty images (David Cannon)

ミュアフィールドの魅力は、そのコースの素晴らしさだけにあるのではない。このゴルフ場でプレイし、スコットランド気質のメンバーたちと交わり、そして、いまに語り継がれる「世界最古の歴史」に触れるたびに、筆者は、ミュアフィールドのとりことなっていった。【前回の記事はこちら

前回に続き、舞台はミュアフィールドである。ますは、その正式名称であり、世界最古の倶楽部組織The Honourable Company of Edinburgh Golfersとゴルフルールの関係ついて触れておきたい。

1744年、この倶楽部組織の設立時につくられた「Rule of Golf」13カ条が、ゴルフルールの原型であることは意外と知られていない。その後、幾度となく改訂が重ねられ、19世紀後半にルールづくりの権限と責任がR&A(英国ゴルフ協会)に移行されるまで、この倶楽部はルール制定の総本山だったのだ。ちなみにR&Aが、ルールブックを印刷して全国に配布したのが1899年。翌90年には米国PGAもルールブックを配布している。

この13カ条からなるルールの存在は、それを証明する物的証拠が見つからなかったため、さまざまな議論が重ねられてきたが、1937年、最後の2ページに13カ条が記された会員ハンドブックがついに発見され、オリジナル論争は決着を見た。

英語で読んでみると、確かに今日のゴルフルールの原型が謳われている。池や海などのウォーターハザードの処理、フェアウエイ以外の石などの障害物は動かせないことオネスティ(プレイヤーの自己申告)が最優先であること、ボールがロストした場合などのアンラッキーに際しては最初に打ったところまで戻って打つこと、馬や人間、羊などにボールが当たった場合はそのままのところから打つことなど、当時のプレイの様子も想像できて面白い。

ミュアフィールドが、全英オープン16回、全英アマを10回など多くのトップトーナメントを実施してきたことは前回紹介した。過去の優勝者はそうそうたるゴルファーだが、なかでも帝王ジャック・ニクラウスが1966年に優勝したときには、このコースは英国で最もよいコースだと絶賛し、帰国後、実家の近郊に、その名を冠したミュアフィールド・ヴィレッジ・ゴルフ・クラブというコースを設計したほどだ。

このコースでは、1974年以降、ニクラウス自身がホストを務めるメモリアルトーナメントという準メジャー級の大会が開催され、絶大な人気を誇っている。2014年には日本の松山英樹が優勝したことも記憶に新しい。またミュアフィールドで、全英オープン、全英シニア両方に優勝者として名を連ねるのは、新帝王のトム・ワトソンのみで、なんとも豪華なメンツである。

私たちが最初にプレイした2010年は、直前に開催された全英アマで、初めてアジア人として韓国のチョン・ジン(JinJeong)が優勝を果たしたメモリアルイヤーだった。

あなた方は韓国から来たのか? 歴史ある全英アマでアジア人が優勝したのは画期的であり、チョン・ジンのプレイぶりは見事だった……数多くのメンバーが心からアジア人の初優勝を称える声を聞くと、保守的でありながらもいいものは素直に受け入れる素晴らしいスコットランド人気質をうかがい知ることができ、深く感銘を受けたものだ。
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小泉泰郎 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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