今後のソフトウェアのリリースで、フェイスブックメッセンジャーは一対一の個人間の支払いや、アプリ内からの直接支払いに対応するという。この動きは果たして、フェイスブックがアップルペイやアンドロイドペイらの競合と直接対決に臨むことを意味するのか。もしくは、そのブームに便乗することになるのか。
恐らく後者の予測が正しいと思える。マーク・ザッカーバーグは1月、投資家らとの電話会談で「フェイスブックは他の決済システムと協調していく」と述べた。
「アップルはアップルペイで非常に巧みなイノベーションを実現しました。決済に関わる煩わしさを取り除いたのです」
モバイル決済で儲けるつもりは無い
ザッカーバーグは同時に「フェイスブックは決済で儲ける考えは無い。それよりも、Eコマースの成長を広告ビジネスの成長につなげたい」と述べていた。
メッセンジャー内部のコードからは、ユーザーらに「おすすめのコマースサイト」を表示する機能も見つかっている。フェイスブックは今後メッセンジャー内に、ユーザーの行動履歴から、好みに合いそうなサイトを表示するものと見られる。
これは長い目で見れば、グーグルの地位を脅かすことになる。現状でコマース業者らはグーグルに対価を支払い、検索結果に彼らのビジネスを表示させているが、同様な取り組みがメッセンジャーでも始まると見られる。
フェイスブックはフォーブスの取材に対し、「2015年以来、ウーバーなどの二十数社がメッセンジャー上に公式アカウントを作り、主にカスタマーサポートに利用されている」と述べていた。
EC販売に特化したアパレルブランド Everlaneの場合、毎日約200名の顧客らとメッセンジャーで会話し、配送などの質問に応えている。しかし、ここで課題となるのが決済だ。メッセンジャーは昨年7月から個人間の送金に対応したが、ビジネスの決済に関してはウーバーにしか対応していない。
しかし、関係筋の話ではフェイスブックは4月12日に開催のF8カンファレンスで、さらに多くの企業とのパートナーシップを発表する予定だという。メッセンジャーが決済導入で成功を収めることは、たやすく想像できる。
「関係者が気になるのは、決済そのものではなく、バックエンドの仕組みがどうなっているのかです」と述べるのは、エディソン・インベストメント・リサーチ(Edison Investment Research)のアナリスト、リチャード・ウィンドサーだ。
ウィンドサーによるとフェイスブックはWeChatや LINE、カカオトークのやり方を追随し、彼らがチャットからコマースへビジネスを拡大した方法を取り入れるという。
しかし、アジアと西洋では文化的にも実際面でも大きな違いがあるとウィンドサーは指摘する。「メッセンジャーはこれまで適切なやり方で機能を拡張してきましたが、今後はその市場に特有の違いを意識する必要があります」
懸念点はあるが、ウィンドサーは「フェイスブックはメッセンジャーで新たなエコシステムを構築し、ここ数年程度で売上を倍増させる」と予測している。