マッカートニーが、今回の申し立てで自身が書いた楽曲の権利を取り戻せても、全てが彼のものになる訳ではない。ザ・ビートルズの楽曲は、ほとんどがジョン・レノンとの共著としてクレジットされているため、彼が請求できるのは50%ということになる。
レノンの持ち分はというと、何十年も前に結ばれた複数の契約で縛られている。彼が既に死亡しているという事実だけでなく、彼が亡くなった時期そのものが、法律上の期限等に影響し、全体として状況はマッカートニーのケースよりもっと複雑だ。また、マッカートニーに申し立てを行う権利を与えている1976年著作権法は、アメリカ以外の国では効力を持たないため、彼が取得できるのはアメリカ国内における所有権ということになる。
近々始まる法廷闘争で、マッカートニーが可能な限りすべてを取り戻したとしても、ザ・ビートルズの過去の大ヒット曲の大半に対し依然として全世界の音楽出版権を所有するSony/ATVは、アメリカ以外の国ではレノン=マッカートニー・カタログで引き続き大金を稼ぎ続けるのだ。
しかし、いずれにせよポール・マッカートニーはお金には困っていない。フォーブスが発表した2015年の「セレブリティ100」で彼は35位にランクインし、彼の年収は5100万ドル(約57億円)だった。