社員のモチベーションは、山の天気のように変わりやすいーー。3月中旬に都内で行われた「ベストモチベーションカンパニーアワード2016」の席上、サイバーエージェント執行役員の石井洋之(現シーエー・モバイル社長)は、そのように語った。
社員モチベーションの高い企業日本一に輝いたサイバーエージェントが、社員モチベーション調査を行ったのは“組織の健康診断”をするためだったという。「社員満足度を上げない限り、自信を持って自社サービスを提供できない」と、石井は考えたのだ。「ヒトのやる気のスイッチを入れられる、社員のモチベーションを高められる会社にならなければ21世紀では勝てません」
「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに掲げる会社ともなれば、それは至上命題だろう。創業1998年のサイバーエージェントは、インターネット広告事業を皮切りに、「アメーバブログ」「755」などのメディア事業、「ガールフレンド(仮)」などのゲーム事業、そして近年は動画・音楽配信事業へと、ビジネスの幅を広げてきた。
なかでも勢いがあるのが、インターネット広告事業本部・西日本事業部だ。昨年10月には、サイバーエージェント全社員(約3,500名)を対象に開かれた全社総会で「ベストプロジェクト賞」を受賞している。“一体感、熱量”が、業績にしっかりと反映され、前期比売り上げが大幅増につながったことを評価されてのことだ。
だが数年前までは、「今ほどの“一体感、熱量”はなかった」と、同社の執行役員で西日本事業部を統括する小池英二(33)は振り返る。冒頭の石井の下で働いた経験を持つ彼も“山の天気”には苦労したという。「僕は結構、失敗しているんですよ。例えば、西日本事業部の責任者になった1年目、優秀な上司や外部の方のアドバイスを聞いて自信が持てる戦略を立てたにもかかわらず期待通りの業績が出ませんでした」
それなりの数字だったものの、メンバーが十分に力を発揮できていないように思えた。戦略には自信があったのになぜ?小池がたどり着いた答えが「高い士気を生みだす文化形成」だった。
「仮に、会社を“橋”に喩えると、『事業』が中心にあり、それを『経営戦略』と『企業文化』が両端から支えているわけです。ところがこの両端の一方でも脆いと、事業そのものが崩れてしまう危険があります。どれだけ秀逸な戦略立案をしても、それを実行するのはチームメンバーなんです。だから、社員がコミュニケーションを取りやすく、高いモチベーションで働ける環境をつくることに集中しようと決めました」