「想定外」が連発の米大統領選の行方[グレン・S・フクシマの知彼知己]

ヒラリー・クリントン(Photo by Mychal Watts/WireImage/Getty Images)


第五に、共和党が、既存の政治家(ブッシュ、クリスティー、ルビオ、ケーシック)、超保守派(クルーズ)、アウトサイダー(トランプ、カーソン)の3グループに分裂しているのは、16年が同党の新しい方向性を決める重要な年になることを意味する。とりわけ、トランプかクルーズが党の候補者に決定すれば、共和党全体の性格は一変するだろう。

第六に、トランプやサンダースの強さを予想した「専門家」がほとんどいなかった点を見ても、これまでの常識が通じなくなっている。 また世論調査も、投票結果を正確に予測できていない。例えば、 2月1日のアイオワ州党員集会直前の世論調査では、クリントンが47.7%、サンダースが44.6%の予想だったが、実際の結果は接戦で49.9%と49.6%だった。共和党に関する世論調査の結果はさらに不正確で、トランプが予想の30.7%に対して実際に獲得したのは24.3%。クルーズは23.8%(実際は27.6%)、ルビオ17.4%(同23.1%)、カーソン7.7%(同9.3%)、ブッシュ3.9%(同2.8%)であった。

第七に、今年の選挙はじつに波乱に満ちており、予測不可能である。例えば、ルビオが予想外に多くの23.1%の票を得て、クルーズとトランプに迫る第3位であったことから、2月1日のアイオワの「勝者」とみなされていたが、テレビ中継された2月6日の討論会でひどい出来だったため、一夜にしてリードを失い、他の“既成の候補者”であるクリスティーやブッシュ、ケーシックに再生のチャンスを与えた。そして、ニューハンプシャー州の予備選では10.6%の5位まで大きく落ち込む結果となった。

今、専門家は、3〜4月に2人の候補者が明らかになると見る人と、5〜6月まで決まらないと言う人に分かれている。民主党は残る候補者が2人のうえ、全国的にはクリントンがサンダースを大きくリードしているようで、候補が先に決まる可能性が高い。

一方、共和党の方は、最悪の場合は、候補者が7月の党全国大会まで決まらない可能性がある。その場合は、民主党が有利になる。それは、共和党が党の指名を巡って争っている数週間に、民主党が党大会後の一般選挙の準備に集中できるからだ。

文=グレン・S・フクシマ

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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