「VR酔い」を解消する技術 米メイヨー・クリニックが開発

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オキュラスリフトやHTC Viveのような仮想現実(VR)ヘッドセットは実在しない世界に私たちを導いてくれる一方で、「VR酔い」という副作用をもたらす。米ミネソタ州のメイヨー・クリニックにはこの問題の解決に以前から取り組み、その研究成果の商用利用を始めようとしている。

そもそもなぜ多くの人がVR酔いするのだろうか。VRがもたらす体調不良は、視覚と内耳で平衡感覚を司る前庭の感覚の不一致から生ずる。私たちはVR空間を歩くとき、実際はその動きをしていない。人間の脳は見ている世界と体感している世界の不一致にすぐ気づく。VRゲームの多くが、プレイヤーを歩いて次の場所に移動させず、テレポートという手段を使っているのも、視覚と体の感覚の不一致を避けるためである。

メイヨー・クリニックは内耳と見ている物を同調させる「ガルバニ前庭シミュレーション (GVS)」というテクノロジーの特許を取得した。この技術を用いると視覚からの情報と内耳感覚を同期させることが可能になるという。

元々は宇宙開発関連で生まれた技術

GVSは元々パイロットのシミュレータ酔いを緩和するために、メイヨー・クリニックの宇宙関連研究ラボ(AMVRL)で開発された技術だ。AMVRLの共同ディレクター、ジャン・ステパネクは「この技術を商業利用するライセンスはvMocionが保有しているが、医療研究をルーツとしており、医療分野への応用も楽しみだ」と述べた。

ステパネクはGVSを使って、目まいのような平衡感覚に関する不調を緩和できる可能性があると述べた。

vMocionはロサンゼルスのスタートアップで、メイヨー・クリニックのGVS技術を商業商品としてグローバルで独占的に取り扱うライセンスを取得した。vMocionが開発したプラットフォームは、VRあるいはARグラス、スマートフォン、テレビなど既存のデバイスと統合が可能で、同社の代表者は、vMocionのプラットフォームがあらゆるVRゲームに対応できると語った。スクリーンで見ている動きを、刺激を感じる4器官と同期し、自身が動いているという感覚を内耳に伝えるという。vMocionは現在、娯楽メディア企業にソフトウエアを提供している。

編集=上田裕資

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