米投資ファンドのJCフラワーズ、米ゴールドマン・サックスの元幹部が創業したプリマベーラ・キャピタル・グループ(春華資本集団)と組んだ安邦保険は先月、両社の交渉に横やりを入れる形でスターウッドの買収を提案。マリオットとの間で買収合戦を繰り広げていた。しかし、「市場のさまざまな状況を考慮した結果、買収提案を撤回することを決断した」という。
安邦側が提示していた買収額は140億ドル(約1兆6,000億円)。その直前にマリオットが示した136億ドルを上回っていた。撤退の発表を受け、スターウッドは今月中にも臨時株主総会を招集し、マリオットによる買収の受け入れについて決議を行うとみられる。
両者がみたスターウッドの魅力
スターウッドが展開する高級ホテルチェーンには、ダブリュー・ホテル(W Hotels)、ウェスティン、アロフトホテル、ルメリディアンなどがある。また、投資銀行ロバート・W・ベアード(Robert W. Baird & Co)のアナリスト、デービッド・ローブによると、スターウッドが保有する不動産の価値は総額およそ40億ドルに上る。
マリオットは両社の統合により期待できる効果として、年間約2億5000万ドルの経費削減を挙げている。同社にとって、運営において競合する面が多く、顧客からの高い評価を得ているスターウッドの買収は、非常に戦略的な計画だといえる。
一方、中国最大の保険会社、安邦の最高経営責任者であり、中国共産党の指導者だった鄧小平の孫を妻に持つウーシァォフゥイ(吳小暉、Wu Xiaohui)は、手ごわい競合相手だったと言われている。同社は2014年にニューヨークの老舗高級ホテル、ウォルドーフ・アストリアを米投資会社ブラックストーンから19億5,000万ドルで買収。その後、米ストラテジック・ホテルズ・アンド・リゾーツを約65億ドルで不動産投資信託会社から買収した。
しかし、その安邦についてはここ数日、米紙ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルがこの買収合戦に関連した詳細な内容の記事を掲載。安邦の不透明な金融構造や所有構造について批判していた。さらに、安邦が最後に提案したスターウッド株を1株82.75ドルと評価する「より優れた提案」についても、設定の根拠についてさらなる詳細を示す必要があるなどと指摘していた。
安邦の買収提案の撤回を受け、マリオットの株価は3月31日、時間外取引で終値比4%以上下落。スターウッド株も、同様の幅で値を下げた。