一種のパニックとも言える状況は、根拠の無い噂が生んだものだった。インスタグラムは即座にこの事態に対処し、「変更までにはまだ時間がかる」と異例の呼びかけを行った。
公式ツイッターでインスタグラムは「我々はみなさんの意見を聞いています。フィードが直ちに変更されることはありません。大規模な変更を開始する場合、みなさんにまずお知らせすることを約束します」と述べた。
インスタグラムでは企業から広告収入を得ているインフルエンサーも多く、表示方法の変更は彼らの利益をリスクにさらすかもしれない。その一方で今回のパニックは、彼らがさらに多くのファンたちにフォローを呼びかける機会を与えたとも言える。
インスタグラムは現在、小規模なグループでアルゴリズム表示導入のテストを行っており、正式な導入までには数ヶ月を要すると述べている。同社は3月中旬に、従来の時系列順表示に変わる、アルゴリズム表示の導入を発表。この変更でユーザーらは各自が興味を持ちそうな投稿や、関連性の高い投稿を優先的に見られるようになると述べた。
過去の投稿も全て閲覧可能だが、表示される順序は時系列順では無くなるとした。ユーザーらはアプリを離れていた間に起こった友人の楽しい出来事やイベントなどの投稿に、よりアクセスしやすくなるという。
有名モデルや歌手もアルゴリズム表示導入に反対
5300万人のフォロワーを持つモデルのケンダル・ジェンナーらは、アルゴリズム表示導入に反発。シンガーのジョン・メイヤーも下記のように述べた。
「頼むから時系列表示をやめないでほしい。これは自分のために言ってるんじゃない。多くのアーティストやクリエイターのために発言しているんだ。関心や興味なんて毎日変わるもので、自分にすらその実態は分からない。自分にも分からない“関連度”が、なんでインスタグラムに分かるって言うんだ」
しかし、アルゴリズム表示の導入は決して突飛なアイデアでは無い。ソーシャルアプリは、ユーザーらを囲い込み、広告ビジネスを成長させることが使命だ。フェイスブックは2009年にアルゴリズム表示を導入しており、ツイッターもユーザーがアプリを離れていた間のツイートを、タイムラインのトップに表示する仕組みを導入。そこでは、投稿が時系列順に表示されないケースもしばしば見られている。一方でインスタグラムは、アプリ立ち上げの2010年以来、一貫して時系列順表示を続けてきた。
筆者の見方としては、インスタグラムのユーザーらはそもそも、アルゴリズム表示を必要以上に怖がっている。投稿への「いいね」やコメントからアルゴリズムは、ユーザーの好みを学習する。フェイスブックに導入された、特定のユーザーや企業の投稿を、ユーザーの好みで優先的に表示する仕組みがインスタグラムにも導入される可能性もある。
フェイスブックが長年のアルゴリズム運営で培ったノウハウを投入することで、インスタグラムのアルゴリズム導入はスムーズに進むはずだ。
インスタグラムによると、現状では投稿の70%が見逃されており、アルゴリズム表示の導入はこれを解決するためだという。インスタグラムの月間アクティブユーザー数は既に4億人を超え、フェイスブックの月間アクティブユーザーも15億9000万人を超えている。