従来、アウトブレインは外部コンテンツにユーザーを誘導して手数料を得てきたが、今後はKikやTelegram、フェイスブックメッセンジャーなどのアプリで、パブリッシャーがユーザーと会話をするサービスを提供していく。
同社は現在、パブリッシャー数社とテキスト形式でニュースを配信するチャットボットの導入を協議している。チャットボットをメッセンジャーアプリの公式アカウントのように運用し、ユーザーは「スポーツ」や「最新ニュース」などのキーワードを打ち込めば関連コンテンツが表示される仕組みだ。
ボットとの会話でユーザーの関心をさぐる
先行事例は既にいくつかある。ニュースメディア「クオーツ(Quartz)」がリリースしたiPhoneアプリは、ユーザーとチャットで会話しながら最新ニュースを提供している。また、フォーブスも先月開催されたモバイルワールドコングレスでTelegramのボット機能を使ったニュース配信サービスのローンチを発表した。人々が毎日使うメッセンジャーアプリにチャットボットを導入すれば、何億人ものユーザーにリーチすることができる。
現状アウトブレインがチャットボットを導入できるのは、ボットメーカー向けにAPIを公開しているKik、Telegram、Slackに限られるが、フェイスブックもメッセンジャー向けのボット開発を外部に呼びかけることが予想されており、4月に開催されるF8カンファレンスで詳細が発表される見通しだ。
これまでウェブ上でアウトブレインが生成したリンクをクリックしたユーザーの数は6億人から7億人に上り、同社は莫大な行動プロフィールをもとに、ユーザーにどのような記事をレコメンドするか判断している。
しかし、現状では取得したデータをアプリに転用できないため、アウトブレインはチャットボットを使ってユーザーに質問を投げかけ、新たなデータを蓄積しようと考えている。
例えば、旅に関する記事の中で、「あなたにとっての夢のバケーションを教えてください」といった質問をユーザーに投げかければ、収集した回答をもとにユーザープロフィールを作成し、ユーザーごとの嗜好に合ったコンテンツを配信できる。
「これまでのように記事を強引に読ませるだけでなく、会話をベースとしたユーザー体験を提供することが我々のゴールだ」とアウトブレインの戦略チームのコリン・ドゥーディーは話す。
質の高い顧客データを収集できるかはボットの会話次第だが、使い方によってはウェブにおけるCookieよりも有効かもしれない。「ボットは自然で手軽にユーザーにアプローチでき、具体的なフィードバックが得られる。ワン・オン・ワンの対話から、よりリッチな洞察が得られる」とドゥーディー。
アウトブレインは将来的に、ウェブ上で収集した顧客データとチャットボットのデータとを統合する予定だという。ユーザーにとっては、良くも悪くもデバイスの垣根を超えて行動が追跡されることになる。「アウトブレインは一つのプラットフォームだ。我々は、あらゆるユーザー接点を最大限活用してデータを収集していきたい」とドゥーディーは述べている。