大統領の弾劾が決まれば、ブラジルの株式市場には何が起きるだろうか──?多くの人たちの間には、政治的に困難な状況が今後も続くとの見方に関わらず、投資家らは何もなかったような態度を貫くだろうとの観測がある。実際に、株価は大きく下落していない。
通貨レアルはどうだろう?現在のところ、レアルの対ドル相場は1ドル=3.50レアル前後で安定的に推移する状況が続いている(2015年9月23日には1ドル=4.17レアル、2016年1月21日にも同4.16レアルに下落していた)。
こうした動きの大半は主に、同国の政治情勢に関する見通しに基づいている。つまり、政治危機は通貨の価値に多大な影響を及ぼしているものの、仮に大統領が辞任に追い込まれても、レアルは現在の水準を維持することができるとみられているのだ。それどころか、年末までに1ドル=3.20レアルにまで上昇するかもしれない。ジルマが辞任する可能性が高まれば、(事態の早期収束を期待して)市場はそれを好感するということだ。
ただ、退陣してもすぐには解決に至らないだろうとの観測がさらに高まれば、株価や通貨の上昇は妨げられるだろう。ニューヨークにあるノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのブラジル担当アナリスト、ジョアン・リベイロは、「弾劾が決定しても、政治または政策に関する展望が即座に好転するとは考えていない」「国営石油会社ペトロブラスをめぐる一連の汚職事件を発端としたリスクが根底にあり、その状況は変わらない」などと指摘している。
次の選挙でPSDBが勝利する見込みがある一方で、誰もブラジルをこの「ブラックホール」から救い出すことはできないとの悲観論がなくなることもない。ミシェル・テメル副大統領やエドゥアルド・クーニャ下院議長、レナン・カリェイロス上院議長をはじめとするPMDBの有力者らについても、ペトロブラスの汚職スキャンダルとの関与が繰り返し取りざたされている。大統領を目指すPSDBのアエシオ・ネベスなど、その他の議員らも捜査対象だ。
ジルマが退陣したとしても、その後のブラジル政界には暗雲が立ち込めている。膠着(こうちゃく)状態が続く可能性は高い。