2014年発売のiPhone「6」(4.7インチ)と「6 Plus」(5.5インチ)は、大画面が特に中国でブレークして空前のヒットとなった。2015年1Qの出荷台数は7450万台に達し、売上高746億ドル、純利益180億ドルと、過去最高の四半期実績を記録した。iPadも昨年リリースの12.9インチの「Pro」の売れ行きが比較的好調だ。大画面が複数の業務を同時にこなすのに便利な点や、Apple Pencilを使ってデザインできる点などがユーザーから絶賛されている。
しかし、大型化による成長にも頭打ち感が漂っている。現行のiPhone「6S」と「6S Plus」の売上は前年からほぼ横ばいに止まり、出荷台数の伸び率は2007年のiPhoneリリース以来最低の0.4%だった。販売台数は7480万台を記録したが、これは決して誇れる数字では無い。アップルは決算発表でこの数字に触れなかった。
大型化で生じた製品ラインナップの「穴」
アップルが端末の小型化に踏み切ったのには、もう一つ理由がある。それは、スマホの大型化に注力し過ぎてきたことでiPhoneのラインナップに「穴」が生じていたことだ。これまで、「ファブレット」よりも小型サイズを好む人にとっては、新モデルと同じ4インチの「5S」が最適だったが、機能が2世代古いことが課題だった。それでも他に選択肢がないため、あえて5Sを選ぶユーザーが多いのだという。アップルは発表イベントで、4インチのiPhone(そのほとんどは5Sと思われる)が2015年だけで3000万台売れたことを明らかにした。今回発表したiPhone SEは、その「穴」を埋める製品だ。
「今日はiPhoneファミリーに新たなメンバーが加わりました。多くの顧客が求めてきたものなので、大いに気に入ってもらえると思います」とアップルCEOのティム・クックは自信をのぞかせた。
iPhone SEは「5S」よりも多くの点で優れている。プロセッサは「6S」と同じA9チップを搭載して「5S」よりも格段に速くなり、カメラ性能も12メガピクセルに向上している。また、Siriをハンズフリーで起動させる「Hey Siri」機能が常時利用でき、「Live Photos」にも対応している。新型のiPad Proも現行の12.9インチより小型で安価ながら、性能では引けを取らない。
アップルはこれまでハードウェアの販売から巨大な利益を得てきた。しかし、今後は新たな成長機会を探ることが必須の課題となっている。かつては画面の大型化で収益をあげたアップルは今、振り子を逆に戻し、画面の小型化と低価格化で新たな収益をつくろうとしている。果たしてこの戦略は正しいのか。今後の推移を見守りたい。