時間が「薬」になるという考え方は、よくある誤解だという。心理療法士に助けを求める人たちはよく、「こんなに長い間、引きずっているべきではないと思う」と話す。つらかった離婚の成立から1年間がたった時点での言葉かもしれないし、愛する人を失ってから2年後の発言かもしれない。こうした人たちは、長期間にわたって自分がもがき続けていること自体に、ストレスを感じている。
実際のところ、こうした人たちの多くは、その苦しみの原因が起きたのがまるで昨日のように思っている。自分の経験について語るのもつらいし、話し始めれば、彼らがどれほどの痛みを持っているかは容易にうかがえるという。
逆境を乗り越え、立ち直るのに必要なスキルを持たないこの人たちは、時間が過ぎてもなお、苦しみ続けるのだ。
研究者たちの意見
米心理科学会誌「Perspectives of Psychological Science」(心理科学の視点)に掲載された最新の研究結果によると、時間が人を癒す効果はないことが確認された。アリゾナ州立大学の研究チームによれば、一般的に人には、それほどの自然治癒力はない。
そのため、自然災害や長期の失業など、人生を変えるような出来事を経験した場合、回復するまでに予想以上の時間がかかる可能性も十分にある。研究によれば、人生にストレスをもたらす要因は健康状態を大幅に悪化させることがあり、その状態は数年にわたって続くこともあり得る。
研究者らは、これまで「ほとんどの人には回復力がある」と信じられてきたことこそが、多くの人がより効率的な回復を図るために必要な支援を受けることを妨げてきた可能性があると警告している。