今年1月、フェイスブックは利用規約で銃器の売買を禁止した。その決定は銃規制を求めるグループに拍手喝采されたが、新たなルールはほとんど効果を見せていない。銃マニアの多くは非公開グループを通じ、今も売りたい銃の写真を投稿している。
フォーブス記者は非公開グループへ潜入。20以上のグループで数週間にわたり取材を行い、銃器売買の実態を突き止めた。銃の売り手がメッセンジャーアプリの決済機能を用い、代金を受け取ろうとするケースもあった。
「NYS武器フォトグラフィー(NYS Weapon Photography)」と名乗るグループの管理者は先月、メンバーたちにこう呼びかけた。「フェイスブックからこのグループを閉鎖されないよう、売買に関するあからさまな投稿は控えるように」
「アイテム」と呼ばれ売買される銃器や弾薬
管理者は銃を「アイテム」と呼ぶことを求め、売買の詳細は非公開のグループメッセージでやりとりするよう指導した。ある時、メンバーがライフルの写真と短いキャプションを投稿すると、30分足らずで他のメンバーから「いくら?」とコメントが付いた。投稿者は「525(ドル)でお願いします」と応じた。
このグループはもう存在しない。管理者のブレンデン・ヘンダーソンはフォーブスの取材に「グループの名前を変えた」と告げ、記者からの質問に「俺が話したことをどう使うつもりなんだ?」と尋ねた。
規約では一応、銃の販売を禁じたフェイスブックだが、彼らがそれを発見するのは至難の業だ。eBayのようなサイトとは違い、フェイスブックには規約違反のアイテムをキーワードで検索したりアルゴリズムで検知する機能は無い。現状ではユーザーの通報を受けてアイテムを削除したり、グループを閉鎖するのが精いっぱいだ。
もはやコントロール不可能な個人間取り引き
非公開の銃グループには、武器愛好者たちが集まっている。そこでは多くの人々がフェイスブックの新しいルールを無視している。フェイスブックのコミュニケーション担当のジョディ・セスは、「システムは完全ではない」と認め、「ルールを作って終わりではなく、実効性を高める方法について検討を続ける」と述べた。
フェイスブックは、規約違反の疑いがある投稿の通報を毎日約100万件受け取っているというが、銃に関する通報の件数は明らかにしていない。レビューチームのメンバーは投稿を確認し、問題がある投稿は削除する。
しかし、銃愛好者のグループは大量にあり、中には数千人のメンバーを擁しているものもある。大半は特定地域のユーザーを対象にし、グループの説明は「銃について語り合う場」などとなっている。そのようなグループを規制するのは難しい。フェイスブックで銃関連のキーワードを検索すると、100以上のグループがヒットするが、その多くは非公開グループで、参加するには管理者の承認が必要だ。
「クリーブランド州の銃愛好者 誰でも参加OK(Cleveland Gun Enthusiasts NOBODY GETS KICKED!)」というグループは、説明欄で「あなたの物を披露して、それがいくらの価値があるか示してください」と記載している。
フェイスブックは1月以降、大量のグループを閉鎖したが、具体的な数字は明らかにしていない。一度閉鎖されたグループが、また同じメンバーでグループを立ち上げるケースもある。この状況について、フェイスブックの担当者は次のように述べた。
「今後はフェイスブックのルールを守ります、と言われたら、我々にそれを止めることはできません」
ECプラットフォームとしての社会的責任
米国においてフェイスブックはECプラットフォームとしての役割を強めつつある。同社はライセンスを持つ銃販売店が銃の宣伝を投稿することは現在も認めている。しかし、フェイスブックは銃のライセンスを持っていると主張するユーザーが本当にそうなのかを確認していない。
また、メッセンジャーアプリが送金機能を持ち、サイト内で銃の売買が完結してしまう点が、事態をさらに厄介にしている。非公開グループやプライベートメッセージで銃の販売が完了した場合、フェイスブックはその内容を把握する術がない。
米国には3億1000万丁の銃があると推定され、全国民が1丁以上を保有している計算になる。「銃規制を求める母親の会(Moms Demand Action for Gun Sense in America)」のシャノン・ワッツは、次のように主張する。
「フェイスブックは、銃をサイトから排除する適切なプロセスを考えるべきです。これは国家的な問題であり、フェイスブックが断固たる態度をとることを望みます」
月間アクティブユーザー数は15億9000万人を突破、ECプラットフォームとしての成長も期待されるフェイスブックに対し、社会的責任を問う声はさらに高まっていきそうだ。