ヤマ場を超えた米大統領候補者レース、今後の展望は

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米大統領選に向けた民主、共和両党の候補者指名争いは3月15日、「ミニ・スーパーチューズデー」を迎えた。予備選や党員集会が12州で一斉に行われる序盤の最大のヤマ場、「スーパーチューズデー」に続く同日の5州での予備選の結果を受け、両党の候補者レースは今後、どのような展開をみせるのだろうか。

共和党:14人目の候補が撤退

地元フロリダ州で敗北を喫したマルコ・ルビオ上院議員は、選挙戦からの撤退を表明した。指名争いから撤退した14人のうち、現職の知事または知事経験者はこれで、合わせて8人となった。

大票田のオハイオ州を制した同州のジョン・ケーシック知事が、残る最後の1人だ。地元で勝利を収めたケーシックは、当分は指名獲得を目指し、戦いを続けることになるだろう。ただし、出身州であるペンシルベニア州の予備選が行われるのは、まだまだ先の4月26日だ。

首位を走るドナルド・トランプの3月16日現在の獲得代議員数は、661人。指名獲得に必要な代議員数の47%を手中に収めた。テキサス州のテッド・クルーズ上院議員は406人、ケーシック知事は142人を獲得している。

共和党の代議員総数は2,472人だ。候補者指名を得るには、この過半数となる1,237人を獲得する必要がある。これだけの人数を確保するためには、トランプは今後、すべての州で代議員の少なくとも50.8%を獲得しなければならない。相対多数ではなく絶対多数を獲得しなければならないのだ。

つまり、「勝者総取り」方式の6州(アリゾナ、デラウェア、モンタナ、ネブラスカ、ニュージャージー、サウスダコタ)では全勝する必要がある(ただし、それでもこの6州が勝者にもたらす代議員数は217人)。さらに、これらのうちモンタナとネブラスカ、サウスダコタの3州は中西部にあり、クルーズの人気が高い(代議員数は3州で92人)。共和党の指名レースは、長期化する公算が高い。

民主党:改めて浮き彫りになった「不公平」なシステム

民主党の候補者選びは、不公平だとも指摘されている。予備選と党員集会の結果にかかわらず、自由に候補者を選ぶことができる「特別代議員」がいるためだ。ミニ・スーパーチューズデーは改めて、この民主党のシステムの不公平さを示した。

優位を維持するヒラリー・クリントン前国務長官は15日までの時点で、代議員の57.9%、バーモント州のバーニー・サンダース上院議員は42.1%を獲得していた。クリントンは現在の調子を維持すれば、特別代議員666人を獲得することになる見通しで、この数は、同氏が過去に居住していたり上院議員を務めたりするなど深いかかわりを持つニューヨーク(代議員数247人)、イリノイ(156人)、アーカンソー(22人)、コロンビア特別区(22人)の4州と、大規模州のペンシルベニア州(189人)の代議員数の合計を上回る。

また、15日の結果でサンダースがイリノイ、ミズーリ、オハイオの3州を制したにもかかわらず、獲得代議員数はフロリダとノースカロライナの2州で勝利したクリントンよりも少なかった。

一方、サンダースにはまだ、勝利が見込める州が9つある(アラスカ、ハワイ、アイダホ、ユタ、ノースダコタ、ワシントン、グアム、ワイオミングの各州とバージン諸島)。これまでに同氏が勝利してきたのは、いずれも党員集会で代議員を選ぶ州。これら9州は予備選ではなく、党員集会を行う。

第三の候補?

米政治情報サイト「ポリティコ(Politico)」などが伝えたところによれば、有力な共和党員らは17日、首都ワシントンで会合を開いた。トランプの候補指名が確実になった場合、本選挙には「真の保守派」である第三の候補を立てたい考えで、それに向けた戦略を練った。

彼らの懸念は、共和党が手をこまねいている間に、トランプが新たな「レーガン・デモクラッツ」(民主党の方針に反対し、共和党のレーガン支持に転じた人たち)や無党派層を増やしてしまうのではないかということだ。

だが、現在の共和党が適切な候補者を探し出すのは困難だ。中間管理層が厚すぎる一方で、明らかなリーダーが存在しない。この現状を考えてみれば、党を乗っ取る「コーポレート・レーダー(乗っ取り屋)」が現れても、仕方がないのかもしれない。

編集 = 木内涼子

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