中村:人工衛星の開発費が、数百億円から場合によっては1億円以下に抑えられる。打ち上げ実績さえできれば変わると思っていたのですが、気象情報会社のウェザーニューズ向けの超小型衛星を打ち上げても変わらなかった。企業向けの専用衛星の開発のみにこだわるのではなく、宇宙利用のリスクをもっと徹底的に下げなければと思い、ビジネスモデルを変えました。
従来の地球観測衛星では衛星写真そのものを売っている。しかし、それだと、解析のプロしか使えません。我々は画像を売るのではなく、地球全部を毎日撮影した大量の画像からデータを抽出・解析し、「顧客のほしい情報」を売る。過去からのデータが蓄積されているので、トレンドを見ることで未来予測ツールとしても活用できると考えています。
青木:現在、中東諸国や東南アジアの国々、海外の大手企業と話を進めている段階。最初からグローバル市場を考えています。たとえば、中東では石油パイプラインの監視、東南アジアは森林火災、洪水をモニターすることへの需要がありますね。
中村:今後、我々の「AxelGlobe」プロジェクト計画は、22年までに50機の打ち上げを考えています。
「宇宙をビジネスの場に」ー。これまでのような政府による利用だけでなく、企業の意思決定に宇宙ビッグデータが使われる。そんな時代に変わっていきます。いまや「宇宙は、使う時代」ですから。
あおき・ひでたか◎グローバル・ブレイン・ベンチャーパートナー/宇宙エバンジェリスト。米国オーバーン大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了後、三菱電機入社。日本初の宇宙船「こうのとり」の開発に携わる。ドリームインキュベータを経て、2015年より現職。主な投資先は、アクセルスペース、ライフロボティクス、カブクなど。
なかむら・ゆうや◎アクセルスペース代表取締役。1979年生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中、3機の超小型衛星の開発に携わった。卒業後、同専攻での特任研究員を経て、2008年にアクセルスペースを設立し、体表取締役に就任。13年に世界初の民間商用超小型衛星の打ち上げに成功した。