ビジネス

2016.03.27 10:31

日本人エンジニアの覆面座談会 in シリコンバレー

photographs by Ramin Rahimian

今も昔も、シリコンバレーはエンジニアたちにとって憧れの地だ。多くのテクノロジーが日々生み出されている場所で働くのはどんな感じなのか。現地で長く暮らす日本人エンジニア4人による「覆面座談会」。

覆面座談会の参加者
Sさん / ビジネスソフト会社で品質管理担当。米大学院卒。現在4社目。
Mさん / ソフトウェアエンジニア。日本で就職後、アメリカに留学。現在3社目。
Oさん / 半導体関連企業のハードウェアエンジニア。米大学院に留学。現在1社目。
Nさん / スタートアップのUXデザイナー。日本の大学卒。現在3社目。



ーお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。まずはこちらでの生活について話を聞かせてください。

M:最近、問題になっているのは、なんといっても家賃の高さ。サンフランシスコだと、2ベッドルーム(日本でいう2LDK)のアパートの家賃が平均で5,000ドル(約60万円)。それも数カ月前の情報なので、今ならもっと高くなっているかも。異常でしょ?

N:サンフランシスコの住宅価格はもうかなり限界までいってますよね。この5年のあいだに2倍とか。企業もどんどんサンフランシスコから出ていっている。こないだもUber(ウーバー)が対岸のオークランドにオフィスを開くという話が出ていました。あと会社ごと、シアトルとかポートランドとかに移転する動きも多いですよね。フェイスブックやアップル、グーグルもそっちの方で開発やデザインのオフィスを開いて、人を雇っている。

M:私のまわりでもポートランドに行く人がすごく多い!それで最近はポートランドの家賃が高くなっているとか。

S:うちの会社はもっと人を雇いたいんだけど、シリコンバレーでは大手に人をとられて見つからないから、最近はインドで採用しています。

N:成功している企業をみると、海外で開発をしているところは多いですよね。

M:うちの会社も東欧のポーランドに開発オフィスがあって、朝出社してパソコンを開くと、コードレビューがたまってる。せっかく前の晩に作ったのに、さっそく「ここを直して」ってきていて、もう24時間仕事が回ってる感じ。

ー転職事情はどうですか?

O:僕みたいなハードウェア系の人間はソフトウェアに比べたら、まだ転職のペースがゆっくりですね。

N:ソフトウェア業界は平均して14か月おきに転職するらしいですよ。転職の条件面がいいので。

M:転職すると給料が上がって、自分の肩書きも良くなるから、少し技術が身についたらすぐに転職する。あと同じ会社に長くいると、ソフトウェアエンジニアとして実力が伸びないということもある。

ー大卒エンジニアの初任給が年収1,000万円超というのは、みなさんから見て妥当だと思いますか?

M:それ言ったら、みんな真っ青になっちゃうよ〜。

S:日本人は真面目だから、「給料に相当する仕事をしないと」って考えるけど、アメリカ人は「これだけお金もらってどれだけ楽するか」と考える(笑)。

M:年収が高いのは、基本的にはエンジニアの数が足りないから。モノを作るのってすごく時間がかかるし、人手も必要。設計書に書かれたスペックを使えるレベルまでもっていくのがエンジニアの仕事だけど、そのプロセスって本当に大変。

O:あと、求められる仕事のスピードがどんどん上がっているという理由もある。速く作らないといけないから、それだけ多くの人手が必要になる。

S:IoT(モノのインターネット化)も関連してるんじゃないかな。うちの会社がこないだ顧客向けに開いた会議でも、メーンテーマはIoTだった。これまでインターネットとはつながっていなかったモノにまでソフトフェアが搭載されるようになったから、市場自体が大きくなっているのは確か。

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増谷康=インタビュー ラミン・ラヒミアン=写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.20 2016年3月号(2016/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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