税関職員は「マンガ=ポルノ」だと考えている
「パロディマンガを見て(カナダ当局は)“5~6歳児が虐待されている”と判断したようですが、まったく馬鹿げています」と彼は言う。「税関職員の間ではマンガ(manga)という言葉はポルノの隠語と考えられ、注意するべき対象になっています。マンガという表現方法が誤解されているのです」
カナダの件は不起訴になったが、児童ポルノ禁止法に違反したとして起訴されたハンドリーの事件は恐ろしい前例だ。ブラウンスタイン氏によると、ハンドリーは膨大なマンガのコレクションを持っていたという。「マンガと聖書の研究が彼のライフワークでした。当局は彼の自宅から膨大な数の書籍やDVD、さらにコンピューター7台を押収しました」
強調しておくが、ハンドリーは児童ポルノを所有していなかった。しかし、当局は彼の所有するマンガが児童ポルノへの「入口」になると懸念し、今回の事態になったのだ。世間の人々は彼が所有していた“エロ本”を不快に思うかもしれない。しかし、そのマンガが「子供を描いているように見える」という理由だけで、このような処罰が下されていいのだろうか。
この事件に関してはインターネット上で『彼らはポルノを所有していたんだからから当然の報いだ』という声もあがった。しかし、ブラウンスタイン氏は「ポルノを所有するのは個人の権利です。そのことで誰かを攻めるのは間違っています」と主張する。
かつて反ナチズム運動の指導者だった、マルティン・ニーメラーはこう言った。「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから」。
「それと同じことがロリやヤオイといったジャンルに関しても起こっているのです。これは危険な事態です」とブラウンスタイン氏は述べる。「ファンタジーの世界で何を楽しむかは個人の自由の問題です。それによって誰かが傷ついている訳ではないのですから、政府の規制は理屈に合わないのです」
結局、筆者は日本で同人マンガを購入することは諦めた。税関で相撲のマンガが児童ポルノに間違えられるとしたら、余計なリスクを犯すのはやめておこうと思ったのだ。使うはずだったお金はコミック弁護基金に寄付することにした。
「寄付で集まった資金は、コミックで不当な取締りを受けた際に、ユーザーが法的手段に訴える場合に使われます。我々は弁護団を結成し、ユーザーを司法の暴走から救うのです」とコミック弁護基金はアピールしている。