なぜ製薬会社は感染症の新薬開発に投資するのか?

MakiEni's photo / gettyimages


第一三共 中山讓治 代表取締役社長 兼 CEO

製薬会社の研究所には、うまく使えずに眠らせてしまった技術や知見が山積み。持てるリソースを有効活用し、新興国に貢献したい。

マラリアやNTDsは、「ビジネスにならない」とされてきました。新薬の開発には莫大な費用がかかりますから、製薬企業にとっては関心があっても単独では取り掛かりにくい分野でした。創薬というのは、新たな発見やテクノロジーの進歩があったからといって、事業としてうまくいくのはごくわずか。金脈を掘るような作業です。

ただ、その過程で、たくさんの知見を得ることができ、社内に蓄積がありますから、それを生かして第一三共ならではの社会貢献をしていきます。

武田薬品工業 クリストフ・ウェバー代表取締役 社長CEO

抗マラリア薬の新薬開発で、持続性向上。GHITとの連携は、豊富な化合物のライブラリーやネットワークにアクセスできるのが魅力。

今、既存の抗マラリア薬への耐性が強まっており、新薬が求められています。当社はマラリアの撲滅に向けて、従来よりも持続性の高い新薬の開発を進めています。この件に対し、GHITから共同研究機関であるMMVが約2.5億円の助成を受けました。

GHITは、政府と民間の製薬会社、アカデミックなどが協業できる革新的な仕組みで、感染症対策に効果的な取り組みができると考えます。当社にない化合物のライブラリーや、現地のネットワークにアクセスできることは、非常に貴重です。

中外製薬 永山 治 代表取締役会長 最高経営責任者

2050年、世界の人口の6割がアジア・アフリカに集中。新興国の経済が発展すれば製薬産業の次なる主戦場になる。

当社はバイオ技術でつくられる蛋白質などのバイオ(高分子)医薬品を強みとしており、それを生かした新薬開発に取り組んでいきます。具体的には、デング熱です。日本も含めたアジア全体に広がり、国内でも注目されています。

デング熱には病原菌が4種類ありますが、全てを1つで網羅できる薬をつくりたい。いい薬ができれば、若い労働力を確保でき、経済活動の中心を担う中間層が生まれます。人口が急増するアジアの成長は、日本や世界経済の発展につながる問題です。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.20 2016年3月号(2016/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事