ビジネス

2016.03.21 16:01

NTT西日本の新規事業開発から学ぶ コーポレート・アクセラレーター


「素晴らしい人とアイデアの集まりで感動した。優劣を付け難いアイデアの中から、NTT西日本との共創により、伸び代が大きいと判断したチームを4つ選ばせて頂いた」

Startup Factoryの企画・運営・立案に携わった秋山貴之広報室長の言葉である。NTT西日本が自社だけでなく、スタートアップ・ベンチャー企業の成長にも貢献したいという思いがしっかりと表れている。

誤解のないように申し上げるが、コーポレート・アクセラレーターは、大企業がスタートアップ・ベンチャー企業を利用する取り組みではない。双方の強みを活かし、弱点を補うことで、両者にメリットをもたらすビジネスアライアンスである。

ゆえに、大企業の関係者が肝に銘じるべきことがある。それは、「大企業のルールや慣習を押し付けないこと」。例えば、大企業の複雑な決済システムや手形取引などはスタートアップ・ベンチャー企業との取引では通じない。市場での競合から、エコシステムでの共創にビジネスのルールが変わったのだ。

その変化を受け入れ、自らも変わらなければ、良好な結果は望めない。自分たちの「マインドのリセット」がコーポレート・アクセラレーターによるスタートアップ・ベンチャー企業との共創で成果を出すためのマスト要件である。

しかし、“言うは易し行うは難し”である。そこで、我々がひとつのやり方として提案しているのが「出島」である。スタートアップ・ベンチャー企業との共創を、自社の既存のルール、システムとは異なる環境でスピーディに進めるための場となる「出島」をつくり、そこで独自のガバナンスで新規事業開発に挑戦してみることだ。


スタートアップとの共創により新規事業を生み出す「出島」の基本3要件
deshima

「本日受賞された4チーム以外の皆さんとも、個別にアライアンスを検討させていただきたい」という太田常務の言葉のように、Startup Factoryの目的は、20社の中からコンテストで選ばれた4チームとの共創だけではなく、NTT西日本とスタートアップ・ベンチャー企業のビジネスアライアンスを数多く、継続的に生み出す土壌をつくることだ。

つまり、コーポレート・アクセラレーターは、初めの一歩であり、大企業とスタートアップ・ベンチャー企業の「ウィン・ウィン」のビジネスアライアンスが珍しくない状態、コーポレート・アクセラレーターという言葉を耳にすることがない時代をつくることを大企業は目指すべきである。そのためにも、自社の文化や特徴を活かした、スタートアップ・ベンチャー企業との共創が進む新たなガバナンスを構築することが、日本独自のイノベーションを大企業が牽引する「エスタブリッシュメントの逆襲」のために、絶対に必要なのだ。

高松充◎TBWA HAKUHODO常務執行役員(兼)TBWA HAKUHODO QUANTUM代表。1989年慶應義塾大学卒業後、博報堂に入社。2011年にHuman-Centered Open Innovation(HCOI)事業を立ち上げ、14年にHCOI実践の場である「QUANTUM」を創設した。

高松充 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.20 2016年3月号(2016/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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