カードカウンティングは、「ケリー基準」と呼ばれるブラック=ショールズ方程式(証券市場におけるリスク・マネジメント理論)の先駆けだった。そこで私は除隊後、UCLAのビジネススクールに進み、ケリー基準についての修士論文を執筆することにした。それにより、リスクと報酬の基礎を学ぶことができた。
やがて、投資マネジャーになりたいと思うようになり、パシフィック・ライフ生命保険会社に入社。しばらくして、PIMCOを立ち上げることになった。だから、バハマでの屈辱がラスベガスで自信や発見をもたらし、それが大学院での研究、今の仕事へとつながったわけだ。
カジノでの失敗がきっかけで、リスクと報酬の感覚を覚えることができた。そして、リスクを取ろうと思うのなら、ルールだけではなく、勝ち負けの確率についても知っておくことが大事だと今ならわかる。
私にとっては、初めての大きな失敗がまさに、「最高の失敗」だったよ。
ビル・グロス◎資産運用大手「PIMCO( パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー)」の共同創業者。デューク大学卒業後、海軍パイロットを経て、UCLAでMBAを取得。現在は、ジャナス・キャピタル・グループの主席ポートフォリオ・マネジャーを務める。