ジョウの狙いはGrindrのユーザーに崑崙のゲームをさせることではない。彼の目標は崑崙を単なるゲーム会社から中国最大のインターネット企業に脱皮させることだ。それもアリババやバイドゥ(百度)、テンセント(騰訊)に追いつくことではなく、崑崙のプラットフォームをソーシャルメディアやインターネットブラウザ、オンラインファイナンス、動画ストリーミングまで広げ、海外のユーザーを捉えることを目指している。
今年2月、ユーザー数3億人のオペラを買収
崑崙は今年2月、インターネットセキュリティーの奇虎360科技、ソフトウエア開発のチーターモバイルなどと中国企業コンソーシアムを作り、ノルウェーのブラウザ開発会社オペラ(Opera)を12億3,000万ドル(約1,390億円)で買収した。
その後、不採算部門の切り離しに動き、1,600人いる従業員の3分の1以上のリストラに着手した。ブラウザのセキュリティとスピードを改善するべく奇虎とも協業しているジョウは、「これから参入しようとしている分野は競争が非常に激しいと知っているが、我々はそれを受けて立つ実力がある」と自信を示した。
ジョウは2004年、自身が立ち上げたソーシャルアプリ「火神(フオシェン)」の規模拡大に失敗し、事業を畳んだ。そして崑崙を設立する2年前の2006年、中国最大のSNS、人人網(レンレンワン)で働き、CEOの陳一舟(チェン・イーチュエン)から仕事を学んだ。
人人網が頭打ちになった後にチェンがオンラインファイナンスや物流に参入し多角化する様子を見て、ジョウはビジネスのヒントを得たという。ジョウは1年も経たずに人人網を去り、中国のソフトウエアやゲームの海外販売を始めた。
オペラの月間ユーザーは3億を超える。ブラウザ事業は、崑崙の他の事業に安定したトラフィックを提供するだろう。そして196カ国から毎日200万人が訪れるGrindrも、ニッチなユーザーをそこに取り込む。
海外への野望に満ち溢れたジョウ自身は、生粋の中国人だ。雲南省麗江の役所で働く両親は、ジョウのスタートアップ志向に反対し、安定した仕事に就くことを望んでいた。ジョウは最初のビジネス「火神」が破たんしたときも故郷には帰らなかった。ソフトウエアを海外で売るようになって、彼の視界はさらに広がっていった。
ジョウは英語があまり達者では無い。創業当時は通訳を同伴してフェイスブック本社を訪れ、広告ポリシーの変更に関して激しい議論を交わした後、なんとか相手を説得したこともあった。