苦境にさらされている小売大手は、ステープルズだけではない。スポーツオーソリティは3月2日に連邦破産法第11条の適用を申請。事業再編を目指し、140店舗を閉鎖する。そのほか、スーパーチェーンから百貨店チェーンに業態を拡大したコールズも18店舗を閉鎖し、実店舗とインターネット事業のバランスを見直す計画だ。
保有する不動産の一部売却で資金を工面するなど、エドワード・ランパートCEOが何とか経営不振を乗り切ろうと苦労を重ねているシアーズ・ホールディングスは、売上高の減少が続く店舗の閉鎖計画を加速させる意向を表明。百貨店メイシーズも40店舗を閉鎖し、本社の人員削減にも踏み切る。
そして、米小売最大手の肩書を持つウォルマートも同様だ。国内で154店舗に加え、小型店舗の「ウォルマート・エクスプレス」の全店、スーパーセンター16店舗を閉鎖する。
業績好調でも閉鎖の企業も
売り上げが好調な小売業者も、一部の店舗を閉める動きを見せ始めている。ターゲットは基盤の合理化を図るため、数十店舗を閉鎖する。スターバックスはジョージア州アトランタに開設した「ティーバナ(Teavana)」の撤退を決定。コーヒーに専念する方針を固めた。
そして、ベストバイは、アマゾンやジェット・ドットコム(Jet.com)と競合していたインターネット事業から撤退する。
メディアでは1990年代、すでに「米国には店舗がありすぎる」との言葉が頻繁に使われていた。それから20年間、店舗は増え続け、現在では「あり過ぎる」をはるかに超えた数の店が存在している。
各社の店舗閉鎖の影響は、買い物客より雇用に大きな影響を及ぼすだろう。消費者は今も変わらず、これらの店舗で買い物をしている。だが、店舗に訪れる頻度は低下している。
食料品店は生き残る
全ての小売業者が縮小しているわけではない。スーパーセンターを展開するメイヤー(Meijer)は年内に、4億ドル(約455億円)を投資して新店舗をオープンさせる。地元での事業に絞ってきた家族経営の株式非公開の量販店が、地域住民のニーズに合った品揃えで、小売業界全体にとって厳しいこの時期を乗り越えようとしている。
大手食料品店チェーンの間では、店舗閉鎖のニュースがないことは注目に値する。ホールフーズやクロ―ガー(Kroger)、一部の州のみで展開するパブリックス(Publix)などは百貨店やその他の大手小売店とは正反対に、新たなコンセプトを採用し、ネットワークを拡大している。実際のところ、米国の小売業で現在、最も注目を集めているのは食料品店だ。食べることが大好きなこの国の人たちは、テクノロジーや衣料品を脇に追いやり、一番のお気に入りとして食料品店を残すところに落ち着いたのかもしれない。ただ、それは一連の店舗閉鎖とは少し別の話だが。