ブルームバーグは「ブルームバーグビュー」への寄稿で、「米国民の結束力を弱め、未来を暗くするような候補の選出につながる役割は演じたくない」と述べ、不動産王ドナルド・トランプとテキサス州のテッド・クルーズ上院議員が候補指名を争う共和党を利する結果となる行動は避けたいとの考えを示した。
銃規制から移民制度改革、宗教の自由、同性愛者の権利まで、さまざまな問題についてリベラルな考えを持つブルームバーグは、左派から大幅な支持を得る可能性が高い。そのため立候補すれば、民主党候補を目指すヒラリー・クリントン元国務長官やバーモント州のバーニー・サンダース上院議員の票を奪うことになる可能性が高いとみられる。
同じ「富豪」でも大きな差
先ごろフォーブスが発表した2016年版の世界長者番付では、ブルームバーグは資産額400億ドル(約4.5兆円)で8位となった。フォーブスの調査では、前年から資産を45億ドル増やしている。一方、トランプが保有する資産はブルームバーグの増加分と同じ45億ドル。ただし、トランプは自身の資産総額は10億ドル程度に上ると主張。フォーブスの調査結果には、以前から異論を呈している。
「良心に照らし」トランプ大統領を拒否
ブルームバーグは寄稿の中で、特に右派の候補者の間に現みられる「過激主義」を強い言葉で非難した。「富豪」という同じ肩書で語られるトランプについては、「イスラム教徒の米国への入国を禁止すべき」「数百万のメキシコ人を強制送還する」といった発言を引用し、「人々の先入観や恐怖心に付け込み、私の記憶にある限り最も対立的で扇動的な選挙戦を展開している」と厳しく批判した。
また、両党の候補者たちは共に実現できない約束をしているとして、問題の解決ではなく「機能不全に倍賭けしているようなもの」だと指摘している。ブルームバーグは今のところ、いずれの候補への支持も表明していない。
一方、米紙ニューヨークタイムズによると、ブルームバーグは全米で放映するTVコマーシャルを制作したり、テキサスとノースカロライナの両州に選挙事務所を開設したり、マイケル・G・マレン元米統合参謀本部議長に副大統領候補として共に選挙戦を戦うことを持ちかけたりするなど、大統領選への立候補に向け積極的な準備を行っていた。
しかし、トランプ対クリントンの戦いとなった場合に自らが第三の候補となれば、クリントンの票を奪い「三すくみ」の状態になるとして、出馬を断念したという。サンダースがクリントンを破る公算が高まっていれば、ブルームバーグの考えは変わっていたかもしれない。