「バーバリー」のトレンチコートは、世界平和を象徴する素敵なアイテムだった!
1914年6月に勃発した人類史上初の世界大戦(第一次世界大戦)は、複雑な同盟、対立関係にあったヨーロッパ列強国の紛争に端を発したものだ。
のちに日本、アメリカも参戦することとなるこの戦争は、当初「クリスマスまでには帰れる」と楽観視されていたが、機関銃の弾幕を避けるために進められた「塹壕戦」が主流となり、戦いは長期化していくこととなる。
そんな折、英国陸軍省の依頼により、寒冷な欧州での戦いに対応するための軍用コートとして作られたのが「トレンチ(塹壕)コート」だ。1879年に開発された「タイロッケン」を改良したこのコートは、革新的なギャバジン生地を使い、将校たちを寒さや風雨から守る画期的な発明となった。
1945年、もうひとつの大戦(第二次世界大戦)が終結したのち、その機能性と快適な着心地から、多くの人々に愛用されるようになった「バーバリー」のトレンチコート。
今では、ここから「戦争」という言葉は連想されないほど、素敵なファッションアイテムとして世に認知されている。
数多くの工程を経て出来上がる至高の1着
「バーバリー」のトレンチコートは、英国北部に位置するウエストヨークシャー州キャッスルフォードの専門工場で生産されている。1着のトレンチコートを完成させるためには、約80にも及ぶ工程を経なければならない。なかでも1cmあたり100本以上の糸を織り合わせて作る密なツイル生地は、通気性を保ち、雨や水の浸透を防ぐためにも、より慎重な作業が求められる。
細かく繰り返される商品検査は、最終工程の段階でも、2回以上の目視による検査が行われる。現存するディテールは、かつて英国軍の実戦のために採用されたものばかり。将校の地位を表すエポーレットや発砲時の衝撃を和らげる胸もとのガンフラップは、たとえ“役に立つことがなくなった”今でも、トレンチコートには欠かせない重要なデザイン要素となっている。
もっとも熟練の技が求められるのが襟付け作業だ。裏地となるバーバリー・チェックを襟型に切り抜く。
首まわりにぴったりと沿うよう緩やかなカーブをつけるために、180以上のステッチで 手縫いされる。