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2016.03.10 16:01

スマホ実質ゼロ円導入は正しい戦略なのか?[数字で読み解く日本経済]


タスクフォースの取りまとめでは、(2)スマホの月額最低料金が高いので、ライトユーザーも利用しやすいスマホ料金プランの提供を提案している。たしかに、いろいろな携帯利用者がいるのであるから、料金プランを多様なものにするのはよいことである。しかし、これは誰がそれを提供すべきか、という論点が残る。

一番難しいのは、(3)キャッシュバックや実質0円などで、新規ユーザーや乗り換えユーザーの端末購入補助を優遇している、という批判だ。まず、「実質0円」の正確な意味である。機種購入代金を分割払いとして、「月々サポート」(ドコモ。ソフトバンクでは「月月割」、auでは「毎月割」)の金額が一致すると、あたかも無料で携帯本体を入手できるように見える。これが問題なのだろうか。

例えば、ドコモで、AQUOSのスマホ(Xi)を購入する例を引いてみる。機種本体価格は、5万4,432円である。この本体価格を一括で払ってもよいし、24カ月の分割払いにしてもよい。一方、毎月の通信料金に2,268円の割引が適用になる。これを月々サポート額とよぶ。分割代金は、毎月2,268円を通信料金に上乗せして支払うことになる。これが分割払いと一致している。一括払いを選択すると、契約時支払額(お持ち帰り価格)は、5万4,432円だが、月々サポートの分だけ通信料金が割引になる。

分割払いを選択すると、契約時支払額(お持ち帰り価格)は、0円。毎月の通信料金が分割払いを相殺している。「実質0円=お持ち帰り価格が0円」である、と考えて、これが好ましくない、と判断するのは、まったく筋違いである。お持ち帰り価格が0円になるのは、24カ月ローンを組んでいるのであって、本体価格を値引きしているわけではない。もし、お持ち帰り価格が0円という意味での「実質0円」が好ましくない、というのであれば、自動車ローンも住宅ローンもおおよそ消費者ローンは好ましくない、ということになってしまう。

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伊藤隆敏 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.20 2016年3月号(2016/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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