業界最大手の DJIテクノロジーはハイエンド製品の開発を強化してプレミアムブランドとしての地位を築こうとしている。同社は3月1日、新型ドローン「Phantom 4」を発表した。
「DJIはアップルをお手本にしている」とDJI向けにアプリを開発しているFreeSkiesのアンディ・プッチCEOは話す。DJIはアップルの戦略を熱心に研究し「ドローン界のアップル」と呼ばれてきた。調査会社フロスト&サリバンのアナリスト、マイケル・ブレイズによると、DJIは世界のコンシューマ向けドローン市場で70%のシェアを獲得しているという。ドローン業界ではホビー用と商業用を合わせた業界全体の販売台数が、2015年の100万台から今年は倍増すると予測される。
新モデルは約1400ドルの高価格路線
UAV(無人航空機)業界には、パロットやYuneec、3D Roboticsなど多くの競合がひしめいているが、DIJは「ユーザーはより多くの金額を支払ってでもDJIのブランドやテクノロジーを手に入れたいと思うだろう」と自信をのぞかせる。最新モデル「Phantom 4」の価格は1,399ドルと、先代のPhantom 3よりも高く設定している。
「2年以上の研究開発期間を経て、障害物回避センサーやアクティブトラッキングなどの新機能を搭載した」とDJIでシニア・プロダクトマネジャーを務めるポール・パンは話す。現在、DJIの研究開発部門には1500名ほどの社員が在籍している。
GoProの二の舞にはならない
DJIが先代のPhantom 3をリリースしたのはわずか11か月前のことだが、Phantom 3 Standardは競合製品よりも安い500ドル以下に値下げをして販売している。ベンチャーキャピタルLux Capitalのビラル・ズベリはDJIの製品ライフサイクルが短いことについて、「全ては計算ずくだ。DJIはFitbitやGoProの株価暴落から、イノベーションを起こし続けることの大切さを学んでいる」と話す。
DJIはドローンの機能向上だけでなく、ソフトウェアの改良にも力を入れている。昨年4月にはSDK(ソフトウェア開発キット)をリリースし、カリフォルニア州パロアルトに75名からなる研究開発チームを立ち上げた。このチームを率いるのは、アップルでアンテナデザインの責任者を務めたロブ・シュラブと、テスラで自動運転のエンジニアリングを担当したダレン・リカルドだ。
DJIは顧客接点でもアップルの手法を真似ている。先月にはDJIケアという、アップルケアにそっくりな保証プランの提供を開始し、中国の深圳と韓国のソウルに店舗をオープンしている。DJIの創業者兼CEOのフランク・ワンは、「店舗は人々が我々の最新テクノロジーに触れるための重要なタッチポイントとなる」と話す。
アップルストアでも販売を開始
DJIはアップルを模倣しているばかりではない。昨年の秋よりドローンの販売でアップルと提携し、Phantom3をアップルのウェブサイトとアップルストアで販売している。DJIのウェブサイトと店舗以外でPhantom 4の先行予約が可能なのはApple.comだけで、1か月後から他の店舗やウェブサイトでも購入できるようになるという。
「DJIもアップルも、素晴らしい競争相手だ」とGoProのニコラス・ウッドマンCEOは言う。GoProも、動画撮影用ドローン「Karma」をこの夏にリリースする予定だ。
一方、中国のドローンメーカー、Yuneecの米国事業を取り仕切るシャン・フィリップスは次のように話す。「DJIはハードコアなユーザーも特化している。ウェアラブルカメラ業界におけるGoProのような圧倒的なブランドはまだ存在していない」。
ワンはこの考えに何ら異論はないだろう。何故ならば、彼が目指しているのはドローン業界のアップルであり、GoProではないからだ。