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それにしても、不思議なのはこの日が初日でありながら、彼らがすでにプログラムを自分たちで書いていることだ。いったいどういうことなのか。ショーンに尋ねると、「全体の学習内容の最初の5%を自習した人を受け入れることにしています。プログラミングが好きかどうか、興味があるかどうか、そして向いているか、などを生徒自身に判断してもらうためです」

実は、ハック・リアクターに応募するためには、まず「コーディング・チャレンジ」と呼ばれるオンラインのテストをクリアしなければならない。内容は、JavaScriptの入門的知識を問うもので、プログラミング未経験者は、CodeAcademyなどの学習サイトなどを使って、自習することが必須なのだ。

さらに、応募を済ませると、Skypeを使ったオンライン面接試験が待っている。未知のプログラムにどう取り組むのかといった課題解決力が問われるのだという。

これに合格すると、晴れて入学.....というわけではない。プログラムが始まる9週間前に、参加者のもとにはプリコース(事前講座)のオンライン教材が届けられる。プログラミングの基礎を50〜80時間ほどかけてみっちり学習するもので、期日までに終わらせないと、入学を取り消されることもあるという。

つまり、プログラム初日の時点で、生徒たちはすでに相当の学習を自分たちで終えていることになる。同校によると、「我々の仕事は生徒の能力を0から60にすることではなく、20から120にすること」だそうだ。

生徒たちの多くはもともとプログラミング未経験だが、中にはコンピュータ科学を大学院で学んだ者も数名いる(修士号をもっていてもプログラム開発ができるとはかぎらない)。また、ハーバードをはじめとする一流のビジネススクールのMBAホルダーたちもいるという。

ハック・リアクターの卒業生で、大手医療機器メーカーのプロダクト・マネジャーからエンジニアに転職した男性は、「履歴書に箔をつけて人脈をつくりたいならビジネススクールへ、でも本当にビジネスで成功したいならハック・リアクターへ行くべきだ」と語る。

とはいえ、やはり13週間の集中特訓は、精神的にも肉体的にもかなりハードだ。フレッドによると、学習ペースについていけず、“インポスター(詐欺師)症候群”に陥る生徒も少なくないという。

「私は本当はこんなところにいられるような優れた人間じゃない、と思い悩む症状です。でもここでの目的は、勉強した内容をすべて完璧に理解することではありません。就職したあとに現場でなにか問題が起きたときに思い出して、自分で調べながら解決できれば充分なんです」

フレッドは、ハック・リアクターの目的は「自ら学べる者」を育てることだ、と繰り返し強調した。

なお同校では、こうした心のケアにあたるため、心理カウンセラーがいて、定期的に生徒たちと面談を行っているという。

文・写真=増谷康

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