アカデミー賞の舞台裏で奔走した、監査法人PwCの女性社員

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今年で88回目を迎えたアカデミー賞の投票を管理するのは、監査法人のプライスウォーターハウスクーパース(以下、PwC)だ。PwCはこれまで同賞の集計管理を82年間行ってきた。

ハリウッドのテクノロジーの進歩と比べると、PwCの集計プロセスはかなりアナログだ。アカデミーの授賞式の4日前から、担当者らは6人のチームで、アカデミー会員から届いた票をすべて手作業で集計する。金曜日の夜には受賞作品と受賞者全員の名前が決定されるが、それは厳密に管理され、当日まで一切外部の目に触れることはない。

2月28日(現地時間)の授賞式当日、PwCの女性社員、マーサ・ルイツは会場のステージの袖で、金色の封筒を手に、プレゼンターたちがやってくるのを待っていた。ルイツは金曜日からホテルの一室にこもり、全24部門の受賞者全員の名前を頭に叩き込んでいたという。

「私達は、書き記すということはしません。受賞作品と受賞者のリストは、何処にも書き残されていないのです」

PwCでアカデミーの業務に13年間携わったルイツは昨年、集計管理チームのリーダーに抜擢された。票を最終的にチェックして、発表前の受賞者の名前を知ることになるのはルイツともう一人の担当者のみだ。二人は3日間をかけて、ひたすら票の再チェックを行うことになる。「これらの票の集計は人の一生も左右する重大な事ですから」

授賞式前日の土曜日までに、ルイツの記憶に24人の受賞者と作品名がしっかり刷り込まれていた。受賞カードに名前を印刷する業者でさえ、受賞者が誰なのかは知らない。PwCは、各部門の候補者全員のカードと封筒のセットを印刷させるからだ。

ルイツらは全てのカードに目を通し、その中から受賞者の封筒だけを選り分け、最終的に金色の封筒を封印する。そして、2つのブリーフケースにそれらの封筒をワンセットずつ収め、鍵をかける。授賞式当日、二人はPwC社の黒い鞄に24通の封筒をワンセットずつ入れて会場に向かった。そして、ステージの袖で受賞者の発表を見守った。

今年のアカデミー賞は2年連続で俳優部門の候補20枠を全て、白人が占めたことで、人種の多様性に関する議論が勃発した。自らもヒスパニック系女性であるルイツは「この問題が以前より活発に議論されるようになったことは嬉しく思います」とフォーブスの取材に述べた。

編集=上田裕資

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