ビジネス

2016.03.02

シリコンバレーで勝つ「一流のリーダー」の条件

仮想化ソフト大手VMwareのパット・ゲルシンガーCEO(写真=ヤン・ブース)


ーあなたの現在のリーダーシップのスタイルはアンディ・グローブ流を継承しているということでしょうか?

私のリーダーシップを形作ったのは確かにアンディですが、私は彼とは別の人間です。そしてまた、インテル流のリーダーシップも完璧ではなかったと考えています。インテルの「議論好き」で「競争的」なカルチャーがアンディのもとで育まれたのは間違いありません。でも、議論をすれば立場の強い人間が勝つので、インテルでは上司の意見が支配的になってしまう。ヴイエムウェアでは、インテル流のアグレッシブさやデータ主義を取り入れつつも、チームワークを尊ぶ文化を大切にしています。

ーハードウェア会社のインテルと、ソフトウェア会社のヴイエムウェアでは、ビジネススタイルも異なります。経営者に求められる資質にも違いはあるのでしょうか。

わかりやすい例を挙げましょう。インテルの最新の巨大工場では、シリコンウェハー(円盤)を製造ラインに投入してから出てくるまで13週間もかかります。

もし初日に機械に何かトラブルがあっても、そのことが発覚するのが13週間後になるかもしれないのです。そうなれば、せっかく作ったウェハーも捨てるしかありません。高品質のウェハーを作るには、1,000ものステップをミスなく実行しなくてはならないのです。そのため、インテルのリーダーには、高い規律や細部への注意力が求められます。日本人の得意な能力かもしれないですね(笑)。

一方、ヴイエムウェアでは、「アジャイル」と呼ばれるソフトウェア開発のスタイルを採っていて、少人数のチームで失敗と修正を繰り返しながら、プロダクトを迅速に作り上げます。こうした組織のリーダーに求められるのは、規律よりもイノベーションやクリエイティビティ、スピードです。

インテルの“攻撃的”ともいえる社風は、アンディ個人の性格によるものだけでなく、計画的で失敗の許されないビジネスモデルがもたらしたものだとも言えるでしょう。

ーあなたをインテルの次期CEOに、と期待する声もありますが、その可能性は?

それはありません。インテルで自分が携わった仕事に誇りをもっていますが、それ以上に、今そうしたプロジェクトを率いている元部下たちに誇りをもっているからです。

たとえば、現在インテルでフェローとしてフォトニクス(光通信)事業を率いているマリオ・パニチアは、私が指南しました。かつてアンディが私を導いてくれたように、私がマリオを高いレベルに成長させてあげられたことが何よりもうれしいのです。

文=増谷康

この記事は 「Forbes JAPAN No.20 2016年3月号(2016/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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