ここ2週間でインドのスタートアップ界隈では巨額の資金調達が相次いだ。セコイアキャピタル・インディアは9.2億ドル(約1,050億円)の資金を調達。1年前に7.2億ドル(約820億円)を調達したばかりだった。インドやイスラエル、アメリカで投資を行っているNorwest Venture Partnersも12億ドル(約1,370億円)を調達している。
注目すべきは金額のみならずその傾向だ。インドで台頭してきているスタートアップの事業領域は中国のそれに似ている。中国の成長が鈍化する中、新興市場の中で次に有望なのがインドなのだ。
最も成功を収めると考えられるのは、インド市場に合わせたサービスを提供するスタートアップだ。例えばJungboはリキシャー(三輪タクシー)で人や物の移動サービスを提供する企業だ。
また、インドでは相次いでユニコーンも誕生している。eコマースのShopcluesはGICやTiger Global、Nexus Venture Partnersなどの投資会社が参加したシリーズDの投資ラウンドで11億ドル(約1,250億円)の企業価値があるとされた。インドで企業価値が10億ドル以上とされたスタートアップは、これが7社目で、中国の21社を追い上げている。
中国の大手テック系企業も参入し始めている。モバイル決済とeコマースを提供するインドのPaytmが6.8億ドル(約775億円)を調達した投資ラウンドを主導したのは、アリババの関連会社Ant Financialだ。この資金でPaytm Payment Bankが設立される予定で、アリババの事業拡張方針と同じ道をたどることになる。
他にもインドのスタートアップの台頭を示すものがある。中国と同じように、ライバル会社同士のM&Aが起こっているのだ。最近の例ではソフトバンクも出資する格安ホテル予約アプリOyo Roomsが、ニューヨークに拠点を置くTiger Global Managementが出資するZo Roomsを買収した。
2015年はアジアのみならず世界中でベンチャー投資が活性化した。調達額はアジアでは400億ドル(約4.6兆円)、全世界では1,285億ドル(約14.6兆円)にも上った。
しかし、2015年10月~12月期には、スタートアップへの投資が過熱し過ぎているとの懸念から、インドと中国の両方でベンチャー投資が鈍った。企業情報データベースCB Insightsやコンサルティング会社KPMGによると、同期にインドのスタートアップ114社が調達した金額は15億ドル(約1,710億円)で、18%減だった。中国でも72億ドル(約8,210億円)で29%減となっている。