英国で進む「自動運転カー」クラウド化研究 バス運行に利用

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あなたが将来通勤で自動運転バスに乗るなら、そのバスはきっと効率的かつ安全に運転するようプログラムされているはずだ。その時、ソフトウエアはドライバーの代わりを果たすだけでなく、コントロールセンターで多数のバスを管理する役割も担っているだろう。

ノース・ロビンと3人のエンジニアたちは、イギリス政府の研究機関「トランスポート・システム・カタパルト」からスピンアウトしてImmense Simulationsを設立した。彼らは何千台もの車両を一括コントロールする管制塔のような技術を開発している。走行する車は巨大なネットワークの一部として動くため、ノースいわく「戦略的に自動化」されているという。

Immenseは、ロンドン交通局のような既存の公的管制機関をユーザーとして想定しており、この新しい市場にはほかの技術系ベンチャー企業も参入を狙っている。Immenseのソフトウエアは、ロンドンのスタートアップImprobableが提供するクラウドベースのシミュレーションプラットフォームで動かされる。Improbaleが昨年開発したSpatial OSプラットフォームは多くのゲーム企業に使われているが、Immenseは実際の都市でのシミュレーションに活用するためにImprobableと手を組み、大規模で詳細なシミュレーションができるプラットフォームを使い、車が天気の変化や歩行者、ほかの車に対しどう反応するかをシミュレーションしている。

Immenseが取り組むのは、何百台、何千台の車の編成を最適化し、それぞれの車が出来るだけ効率的に正確な目的地にたどり着けるようなプログラムの構築だ。走行中には道路工事や自転車、スケートボーダーなど様々なものとの遭遇が考えられ、それらへの対処が必要だ。

ウーバーは人間のドライバーと乗客との間で最も効率的なルートを見つけるために、ルート最適化システムを導入している。待機中のドライバーをどこに行かせるか、ドライバーの待ち時間をいかに減らすかについて試行錯誤しているが、自動運転カーが登場すると、状況はまた変わるだろう。

ドライバーの集団をモデリングする作業はまだなされていないが、Improbableの共同創業者ハーマン・ナルラは「車に自動運転させるだけでは十分でない。車の集団をコントロールするという考え方は、ウーバーやLyftのような会社にとって将来的に非常に重要になる」と語る。

2015年初め、ウーバーは大量のエンジニアとマネジャーをカーネギーメロン大学のロボティック研究所から引き抜いた。これは同社が自動運転カーを開発するためのステップだったと推測されている。

IHS Automotiveは2035年には世界の小型自動車販売の10%が自動運転カーになると予測する。英ミルトン・キーンズやシンガポールでは、自動運転カーを走らせる実験が行われ、
多くの企業は未来の市場を見据え、すでに準備を始めている。

Improbableは自動運転カーが与えるインパクトについて、企業から大量の問い合わせを受けているという。例えば保険会社は自動運転カーが絡む保険料をどうするのか検討しなければならず、価格モデルを作るためにImprobableにシミュレーションを依頼した企業もある。

経済協力開発機構(OECD)がポルトガルのリスボンを対象にした研究では、自動運転カーを導入した場合、道路上を走る車は現在の10%まで減らせるとの結果が出た。自動運転カーは、それがまとまって導入されれば、都市の渋滞緩和に大きく貢献しうる。

ノースは将来の顧客について、「伝統的な管制機関かもしれないし、未来型の新しいテック企業かもしれない」と明言を避けたが、ロンドン交通局のような行政当局は「非常に興味を持っている」と述べた。

編集=上田裕資

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