「さあ、それではご覧いただきましょう。ポルシェ ニュー911です」
ポルシェ ジャパン株式会社の七五三木 敏幸(しめぎ としゆき)代表取締役社長が高らかに放つ声とともに、新しいポルシェにかぶせられていた幕が取り払われた。2016年2月23日。ニューポルシェ911カレラシリーズの記者発表会が東京都内で開催された。
ポルシェ ジャパン株式会社・七五三木 敏幸代表取締役社長この発表会では、ニューポルシェ911カレラシリーズの「911カレラ」、「911 カレラS」、「911カレラS カブリオレ」が披露された。ラインアップはこの3車種に「911カレラ カブリオレ」を加えた全4車種。
ポルシェが次世代911と呼ぶこのシリーズは、2011年8月に発表された911カレラ、911カレラSの“Type991”をベースにリファインしたモデルで、2015年9月にフランクフルトモーターショーで発表された“Type991 Ⅱ”となる。
911カレラこの“Type991 Ⅱ”の先代モデルとの大きな変更点は、クルマの心臓にあたるエンジンのターボ化だ。ポルシェ ジャパン株式会社代表取締役社長の七五三木 敏幸は、以前搭載していた自然吸気エンジンから過給器付きのターボエンジンに変更したことを、「のちに911の歴史をふり返ったとき、エンジンのライトサイジングおよびターボ化は大きなマイルストーンと言われることでしょう」と語る。なお、七五三木社長は記者発表のスピーチの中でエンジン変更の理由をこう説明した。
「ポルシェ911は我々ポルシェにとって特別なモデルです。1963年にフランクフルトで誕生してからスポーツカーのアイコンとして世界中で愛されてきました。デザイン、レイアウトなどに大きな特徴を持つ唯一無二のスポーツカーです。(中略)新しいカレラ、カレラSにおけるハイライトはいくつかありますが、最大のトピックは3リッター水平対向6気筒ターボチャージドエンジンです。高効率および低燃費を実現するため、先代モデルと比較して排気量は小さくなりましたが、より高いパフォーマンスを誇る、ライトサイジングの見本といえます。2020年までに欧州で販売されるすべての乗用車、この平均CO2の排出量を95g(1km走行あたり)にするという目標を達成すべく、スポーツカーメーカーであるポルシェが選択したのがライトサイジングです」
911カレラ カブリオレ
2020年までのCO2排出量目標とは、欧州委員会が2020年より基準値として制定するものであり(現在も段階的に規制が適用されている)、世界で最も厳しい規制だ。温暖化ガス排出の削減は社会的な要請であり、ポルシェのみならずすべての自動車メーカーにかせられた課題である。
CO2排出量を減少させる手段としては、ガソリンのほかの動力源を使用する電気自動車やプラグインハイブリッド、燃料電池車などいくつものアプローチがある。もちろんポルシェもプラグインハイブリッドをはじめさまざまなアプローチにおいて環境問題に取り組んでいる。その上で「もう一つの形」としてポルシェが提示するのがエンジン自体のサイズを小さくするというライトサイジングによる低燃費化である。
新世代エンジンの開発担当にあたり、先代991カレラの自然吸気3.4リッターエンジン、同じく991カレラの自然吸気3.8リッターエンジンと同等以上の性能を持つターボエンジンを10種類以上開発。その中には3.0リッターを下回るものもあったという。そのなかで、出力、燃費を総合的に判断した結果として、今回の3リッターエンジンが採用されたという経緯がある。これが、単なるダウンサイジングではなく、ライトサイジングとポルシェが明確に宣言する理由だ。
新開発の水平対向6気筒ターボエンジンは、911カレラで370馬力、911カレラSで420馬力と、ともに先代モデルよりも20馬力のパワーアップを果たした。燃費の面では、新世代エンジンは従来のエンジンよりも約12%も効率性が向上。100キロ走行あたりの燃料消費量は最大で1リッターも低減した。その上で最高速度は911カレラが295km/h(6km/h向上)、911カレラSで時速306km(4km/h向上)。昨年の「ルマン24時間耐久レース」でライバルメーカーよりも小排気量のエンジンを搭載しながらも17年ぶりに総合優勝を果たしたポルシェの技術力が、ライトサイジングと同時にパフォーマンスを高めるという、一見相反するものを成し遂げている。
オプションのスポーツクロノパッケージを選ぶと、ステアリングホイールには918スパイダーのモードスイッチに由来するモードスイッチが装着され、「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ・プラス」「インディビジュアル」の4つの走行モードを切り替えることができる。写真は911カレラ911カレラSシャシーはPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)を、911カレラの全モデルに標準装備。車高を10mm下げたことにより高速コーナリング中の安定性が向上。オプションで、ボタン操作によりフロントアクスル(前輪の軸)を40mm上昇させる油圧式リフティングシステムが設定されている。傾斜の急な車庫の出口などでボディが地面と接触することを防ぐ点で、日常の実用性にも配慮したシステムだ。
911カレラS。PASM標準装備により先代カレラに比べて車高が10mm下がっているまた、車両後部に搭載されているエンジンとインタークーラーへの空気の流入量を増やす目的で、エンジンフードのスリットを従来の横向きから縦向きに変更。リア周りのルックスの印象が大きく変化した。新世代のショックアブソーバー搭載による快適性のアップとダイナミックな走りの実現、転がり抵抗を低減しながら性能を向上させたタイヤなど、走りの喜びと乗り心地のためのブラッシュアップが随所に施された。同時に新しいヘッドライト、4灯式のブレーキライトなど、外観も随所をリファインし、新しいポルシェであることを主張する。
911カレラまた、クルマのIoT化が進むなか、ニューカレラ911にはポルシェ コミュニケーション・マネージメントシステム(PCM)と呼ばれる新しいインフォティメントシステムを搭載。手書き入力も可能なマルチタッチ7インチディスプレー、Apple CarPlayへの対応、Google EarthおよびGoogleストリートビューも組み込まれ、さらにVICS情報にも対応したことでナビゲーションの性能は大幅に向上した。オーディオシステムとしては従来からのボーズに加え、ブルメスターのサウンドシステムを新しいオプションとして採用。
Carplayにも対応。データ通信専用のSIMカードがポルシェから提供される。日本における、昨年のポルシェの新車登録台数は過去最高の6690台で前年比で25%アップ(日本自動車輸入組合による統計)。その中でも日本では911の人気が高いという。「世界的に見ても2008年の金融危機以降、ポルシェは世界中で販売台数を伸ばしてきました。その立役者は新興国のマーケット、そしてカイエン、マカンといったSUVです。本国ドイツをはじめとするヨーロッパ、そして日本などのいわゆる成熟したマーケットでは、911こそがポルシェの代名詞であり、ポルシェが高いブランド力を維持している大きな理由でもあります」(七五三木社長)
七五三木社長は、主力モデルの911が生まれ変わったことによる販売台数の増加に期待こそするものの、「いたずらに販売規模の拡大を目指すのではなく、お客様の満足度を高めることなど今後の飛躍に向けて必要な土台をつくる活動に重点をあてていきたいと考えております」と、丹念に歩を進めていく姿勢を強調した。
3月12日、13日には、全国のポルシェの正規販売店で「ポルシェ ニュー911 デビューフェア」を開催。今後も多くのカスタマーに新型911に試乗する機会を設けるという。
それぞれのモデルの希望小売価格は以下の通り(すべて右ハンドル仕様と左ハンドル仕様あり、消費税込み)。
ニュー911カレラ(7速MT)¥12,440,000
ニュー911カレラ(7速AT)¥13,091,000
ニュー911カレラ カブリオレ(7速AT)¥15,100,000
ニュー911カレラS(7速MT)¥15,190,000
ニュー911カレラS(7速AT)¥15,841,000
ニュー911カレラS カブリオレ(7速AT)¥18,130,000
問い合わせ先ポルシェ カスタマーケアセンター 0120-846-911
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